19 いよいよ体育祭
体育祭まであと五日。
その間午前中は授業、午後は準備なので、学校全体が前のめりに浮ついている感じだ。
(これが高校生の体育祭なんだな)
中学の時も体育祭は一生懸命頑張ってきた。でもどこかやっぱり、先生たちの主導でやらされている感じがあった。
今は、先輩たちの指導のもと自分たちで考え、楽しんでいる。そこが違うんだと思う。
「よーし! 櫓、完成ー!」
体育祭二日前に櫓は無事出来上がった。台風は発生していないし当日の天気予報は晴れだ。パネル絵の取り付けや人形の飾り付けなども順調に進んでいった。
前日の総練習では騎馬戦の予選が行われ、お祭り気分は否が応でも盛り上がっている。ついに明日、高校生活初めての体育祭が始まるのだ。
その夜、私はドキドキしながら山岸くんにLIMEを送った。
『明日の体育祭、頑張ろうね』
すぐに既読がつき、返信があった。
『ああ。楽しもうな』
『それと……後夜祭の時はウオータークーラーのとこで待ってる』
(!! やっぱり、夢じゃなかった! 後夜祭、一緒に過ごせるんだ)
『うん。後夜祭も楽しもうね!』
お気に入りのスタンプを送ると、山岸くんからもスタンプが返ってきた。
そして、ついに体育祭がやってきた!
秋晴れ、と言いたいところだけど、まだ日差しは強くほぼ夏と変わらない。たぶん今日一日で真っ黒に日焼けすることだろう。
「有紗、あとで見に行くわね。頑張るのよー」
「はあい。行ってきまーす」
開会式、ラジオ体操、生徒会長の気合入れで幕を開けた体育祭。応援合戦は朝と夕の二回行われる。まずは朝応援からだ。
私たちが頑張って作った櫓にずらりと生徒が並び、その前に綺麗な衣装を着た応援パートの人たちが位置取る。
歌を歌い、口上を叫び、櫓の上でジャンプして。他のグループよりも声を出そうと私たちは頑張った。
(どのグループもすごいな。でも、きっと私たちが一番)
競技が始まると熱はいっそう高まった。私はタイヤ奪いに出場する。運動場の真ん中に積まれた大小さまざまなタイヤを、自分の陣地にたくさん持ってこれたら勝ちだ。
女子のみの競技だけどその奪い合いときたら凄いもので、練習でも気合が入り過ぎて怪我をしてしまう子がいたくらい。
真衣子や美佳と一緒に出場した私は、けっこう頑張ってタイヤを取ってくることが出来た。
「頑張れ、7組の女子ー!」
男子たちが応援してくれている。山岸くんの声も聞こえた。その時、私の持っていたタイヤを引っ張って取ろうとする敵が。
(ま、負けるもんかー!)
真衣子と二人で必死に抵抗し、なんとか振り切ることができた。
「やったね! 三人とも頑張ってたやん!」
櫓に戻ると奈津が誉めてくれた。男子たちも口々にお疲れ様と言ってくれる。みんなに囲まれた中で、ふと誰かが私のポニーテールをつん、と軽く引っ張った。
振り向くと、山岸くん。そして少しかがんで。
「お疲れ。凄いパワーやったね」
なんか顔が近いような気がして、思わず赤面する。
「あ、ありがと! もうヘトヘトよー。でも一位取れてよかった!」
へらっと笑うと、山岸くんも優しい笑顔を返してくれた。
「……ちょっと奈津。見た? 今の」
「見ましたとも美佳。笑い合う二人。ねえ真衣子?」
「ね~。めちゃラブラブやねえ~。熱い熱い~」
三人にそんなことを言われているとは知らず、山岸くんの背中を見送っていた私だった。




