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18 運命の席替え

 体育祭の準備に追われるうちにあっという間に夏休みは終わった。

 

 あれから、山岸くんとはなぜかタイミングが合わなくて顔を合わせることが少なく、あっても他の人がいっぱいいてあまり話はできていない。

 

(でも、あの約束があるから頑張れる!)


 後夜祭でキャンプファイヤーを見る……夕暮れから夜に変わるロマンチックな時間を二人で過ごせるなんて。本当に夢のようだ。


「それは、山岸から告白する気だよね」


 奈津たちとのグループLIMEでみんなに断言された。


「そう思う?」

「そうだよ! でないと誘うわけないやん!」

「やっと山岸も告る気になったか~」

「えっ、やっと、て」

「絶対二人は両想いやから。山岸がもじもじしてたら有紗、じぶんから告りなよ」

「わかった……頑張る」




 そして今日は、二学期の始業式。隣にいられる最後の日だ。


 山岸くん来てるかな。軽く深呼吸してドアを開ける。


「おはよ」


 山岸くんはもう席に座っていて、すぐに私に気がついてイヤホンを外す。そして優しい笑顔で挨拶してくれた。


「おはよう! 山岸くん」


「今日も元気やね、和辻さん」


 それは朝からあなたと話せたからです、なんて言えないけど。


(どうか、席替えしても近くに……せめて、同じ列にいられますように)


 体育館での始業式のあと、クラスに戻ってから席替えだ。尾崎くんがくじを作ってきてくれたので一人ずつ引いていくことになった。席の数字はランダムに振り分けられているので、番号と席表を照らし合わさないと自分がどの席かわからない仕組み。


「全員引きましたねー? では座席表を貼りまーす」


 尾崎くんが楽しそうに黒板に紙を貼る。昨日家で作ってきたんだそうだ。


(えーと、私は……今度は左端の列の、前から二番目か……)


「はい! さっさと場所移動してくださいよー」


 なぜかめっちゃ張り切っている尾崎くんに促され、全員が席を立つ。最後に、何か話しておかなきゃ。


「山岸くん、一学期間お世話になりました」


「俺のほうこそ。ありがとう」


 うう、このイケボを隣で聞くのも最後なのね……嘆きつつ新しい席へと移動する。今まで一番後ろだっただけに、こんな前に座るのは新鮮だ。


「あれえ、和辻さん、お隣やねえ」

 

「あ、坂口くん! よろしくね!」


 よかった、坂口くんが隣なら、山岸君が遊びに来てくれるかも。


「僕、ラッキーやなあ、隣は和辻さんやし斜めは山岸やし」


「え?」


 そこへ山岸くんが現れて、「俺、ここ」と私の前に座った。


(えー! ほんとに? 山岸くんが前の席? 嬉しすぎる)


「またよろしく、和辻さん」


「こ、こちらこそ」


 至近距離に山岸くんの背中。こんな役得な席、ある? 白い開襟シャツの内側に、青雲Tシャツを着ているのが透けて見える。


(けっこう肩幅あるんだなあ……男子だから当たり前か……ああ、こんなに自然に山岸くんの後姿を見ることができるなんて。神様、ありがとうございます)


 奈津たちを探すと、真ん中の列の後ろのほうで真衣子と隣になり、楽しそうにしていた。私と目が合うと、ぐっ! と親指を立ててウインクする。私も手を振って笑顔を返した。

 美佳は……というと、なんと教卓の真ん前。私に向かって泣き真似をしていた。後で慰めてあげなきゃ。


 山岸くんは坂口くんと話すことが多いから、自然に体を右に回して背もたれに右ひじを掛けていることが多い。その間私は彼の顔も見れるし、イケボも堪能できる。


(幸せ……最高の席だあ)


 私は前世で何か徳を積んだのかもしれない。そのくらい、この幸運に酔いしれていた。







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