13 偶然の出会い
さて、これからどうしよう。短い商店街だからこのままだとまたワカたちとすれ違うことになる。一人ぼっちでいるのを見られたら逆に気を遣われてしまうだろう。他に同級生がいたら仲間に入れてもらうんだけどな、ときょろきょろしていたら。
「あれ~、和辻さんだぁ」
このほのぼのした声は、坂口くん。まさか。
振り向いた私の目の前にいたのは、テニスウェアを着てラケットバッグを担いだ山岸くんと坂口くんだった。
「あ、あれ? どうしたの二人とも、こんなところで」
「この先のテニスコートで練習試合してた」
山岸くんがなぜか私の顔を見ずに返事をする。なんでだろ?
「チャリで帰ってたらさぁ、なんか賑やかそうなのが見えて。腹も減ったし何か食ってくか~って山岸と寄ってみたんよ~」
「そうやったん。もう何か食べた?」
「いや、まだこれから」
「あ、じゃあね、あっちの『はしまき』が美味しいよ」
はしまきとは、お好み焼を薄くして、くるくると箸で巻いて食べやすくしたものだ。食べ歩きにはもってこいだし、けっこうボリュームもある。
「あ、俺それ好き」
「俺も~。じゃあ行こ。和辻さん、よかったら一緒にどう?」
「あ、ありがとう。いいの?」
山岸くんの目を見て聞くと、軽く頷いてくれた。
「でも和辻さん、なんで一人でおったん?」
「ああ、それはね……」
その時ちょうどワカと小山くんがこちらへ歩いて来ていた。私を見るとワカはタタっと寄って来て、こそっと耳打ちする。
「ありがと、有紗! この後二人で回ることにした! 頑張るね!」
そして小さく手を振ると、また二人で人の波に消えていった。
「なるほど~、和辻さん、恋のキューピッドやったんや」
「そんな大層なことはしてないんよ。ただ一緒に浴衣着て夜市に来ただけ」
「俺らもラッキーやったなあ、山岸。浴衣姿の可愛い和辻さん見られてさぁ」
「なっ……! 坂口くん、からかわんとって」
「ほんとやって。なあ、山岸」
やめてー、山岸くんに振らないでー、と思ったのだけど、山岸くんはあのイケボでボソっと「似合ってる」と言ってくれた!
相変わらず目は見てくれなかったから本当かどうかわからない。でも、嬉しい。せっかく着た浴衣だもの、山岸くんに会えたなら本望だ。
その後は三人で夜市を楽しんだ。
かき氷を食べて舌をいろんな色にしてみたり、射的で遊んだり。子供みたいにはしゃいでしまった。
ヨーヨー釣りをした山岸くんがヨーヨーを三つも釣り上げて、私と坂口くんに一個ずつプレゼントしてくれたりもした。(大事にしよう……!)
「じゃあそろそろ夜市もお開きみたいだし。帰ろうか〜」
坂口くんにそう言われるまで私は時間も忘れていたみたいだ。楽しい時が終わることを内心残念に思いながら、二人が自転車を停めている場所までついて行った。
「和辻さん、家まで送っていくから」
自転車を押しながら山岸くんがそう言ってくれた。
「そんなのいいよ、うちはここから近いんだし。二人とも遠いんやから早く帰らないと」
「だめだよ~、夜道を女の子一人で帰らせるわけにはいかんよね? 山岸」
うんうんと頷く山岸くん。すると、坂口くんの目がキラリと光る。
「じゃ、僕はちょっと急ぎで見たいテレビがあるんでここで! またね、和辻さ~ん!」
「えっ、ちょっ、坂口くん?」
打ち上げの時と同じようにニコニコ笑顔で手を振って、坂口くんは猛スピードで自転車を漕いで去って行った。




