11 初LIMEと突然のイケボ
帰宅したあと、奈津たちとのグループLIMEではめっちゃ呆れられた。
『彼女がおるかどうか確かめんかったん?』
『二人きりになったのに?』
『LIMEしてもいいって許可もらっただけ? 告白もせず?』
そうは言っても私には随分と勇気のいることだったのだ。
『今告白しても山岸くんは私のことなんとも思っとらんだろうし。もっと仲良くなってから、と思ったんだよう』
『そんなにのんびりしとったら誰かに取られちゃうよ~』
『最近怖いイメージが薄れてきて、かっこいいって言われ始めとるもんね。ライバルが出てこんか注意しとかんと』
『ええっ、ホント?』
『ホントホント。有紗、この夏が勝負よ!』
確かに、山岸くんはイケメンだしあの噂も誤解だってわかったし。これからモテていくのは目に見えてる。
『わかった。頑張る』
奈津たちとのLIMEが終わったあと、私はスマホを握りしめて悩んでいた。山岸くんに初LIMEを送ろうとしているのだ。
(『さっきは送ってくれてありがとう』、これだけをサラッと……)
どのスタンプを送るかもさんざん悩み、ようやく送信した。
意外にもすぐに既読になり、「どういたしまして」とひとこと、それとスタンプが送られてきた。
(嬉しい! 山岸くんとの初LIME!)
思わず画面をスクショしてしまった。これから、もっともっと会話が増えていくといいな。
翌月曜日。教室に入ろうとした私はふと足を止めて考えていた。
(山岸くん来てるかな。いつもより大きな声で挨拶してみたりする?)
散々悩んでいたその時、頭上から大好きなイケボが降ってきた。
「何してんの」
「あ、や、山岸くん、おはよ……!」
振り向くといつもより優しい笑顔の山岸くんがそこにいた。
「ドアに手掛けたまま固まっとるけど、入らんの?」
「あ、入る、入ります……!」
慌ててドアを開ける。まさかいきなり顔を合わせるとは思わなかった。心の準備が出来てない。
「おはよー有紗! 山岸も一緒に来たん?」
中に入るとすぐに奈津がおはようを言ってくれた。美佳や真衣子もいるし、坂口くんは山岸くんの机に腰掛けてニコニコしている。
「違うって。そこでたまたま会ったんよー」
「和辻さん、ドアの前で動きを止めとってさ。寝てるんかと思たよ」
「寝てないってば」
山岸くんが私に軽口を叩いてくれる。ああ、朝からなんて幸せなんだろ。
「そうそう、クラスのカップル第一号がついに出たんよ~」
真衣子が尾崎くんを指差して言う。
「打ち上げ後のカラオケで恵美に告って、みんなの前でカップルになったらしいからね〜」
「わあ、そうなんや! そっか、同じ剣道部で仲良かったもんねえ」
「たぶんこれからまだ増えると思うよ〜ボクの情報網によるとね」
坂口くんが言うとなんだか信憑性があるように思える。
「そういうお前はどうなんよ?」
「僕が好きなんは山岸やから〜」
坂口くんが山岸くんにもたれかかり、奈津たちはキャーと笑う。
「めっちゃお似合いやん、二人」
「でしょ~」
「あほか、お前」
山岸くんが坂口くんの頭を軽く小突く。坂口くんはえへへと笑い、身体をユラユラさせていた。
そして先生が来て授業が始まる。いつもと同じ風景だけど、隣にいるのは私の好きな人。少しだけ距離が近くなった、大好きな人。それだけで、なんだか世界が煌めいて見える。
初めて好きになったのが山岸くんで良かった。授業中、そんなことをずっと考えていた。




