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酒場での騒動

 俺は食事をしながら、これからどうしようと思っているのかをフレデリカに話した。


「ひとまずお金を稼ぐ方法を探さないとならないから、王都にあるギルドに行って、冒険者登録をしようと考えているんだ。それから俺の加護についても、知識を持っている人に教えを乞いたくて」

「この国のギルドに行くの?」

「情けない話だけど、実家を追い出されて、ほとんど追放同然の状態で国を出てきたんだ」


 加護鑑定の儀の日、自分に起きたことをざっと説明すると、フレデリカの顔からどんどん表情が消えていった。

 おそらく怒っている、それもすごく。


「あなたが無能なんて、その人たちの目は節穴すぎる。それにひどい言葉で傷つけたのも許せない」

「ありがとう。俺のために怒ってくれて」


 味方になってくれたのは、ライリーとフレデリカだけだから、とてもうれしい。


「あなたを馬鹿にした人たちを倒しにいく?」

「んん!?」


 真剣な顔でとんでもないことを言い出した。


「いやいや、それはいいや! どっちかっていうと、あの人たちとはもう関わり合いたくない。幸い、俺の加護は外れってこともなかったし、これまでのことは忘れて好きに生きるほうが幸せだと思ってるから」

「あなたがそういうのなら……」


 あんまり納得していない表情のまま、フレデリカが頷く。


「……加護について知りたいなら会わせたい人がいるわ。私の育ての親の里長は、とても多くの知識を持っているの。彼なら何か知っているかも」

「ちょっと待って、家族がいるのに、いきなり俺の旅に同行して大丈夫なの?」

「平気。私に旅を進めたのが里長だから」


 珍しい話だな。若い女の子はそもそも旅なんてほとんどしないはずだ。俺の家同様、特殊な家庭環境なのだろうか。

 でも、根掘り葉掘り聞くのは悪いか……。


「加護について教えてもらえるのなら助かるよ。案内してもらえるかな?」

「もちろん」

「――おい、見ろよ! アイツは国を追放されたっていうエリアス・ブランドだ!」


 フレデリカとの会話を邪魔すような声が、突然聞こえてきた。


「追放されたってのに女と酒場でイチャついてるとは、モテる男は違うねー」

「イヤイヤ、あいつ無職なうえに追放された身だぜ。あんな奴がモテるはずがねーよ」

「おい無能の無職君、その女どうやって口説いたのか教えてくれよ!」


 げらげらと笑い声が上がる。

 俺の事情に詳しいことから考えても、奴らは俺が追放となった国の商人らしい。

 おそらくこの国へ商品を仕入れに来たところなのだろう。

 どうやらこの二十日間の間に、俺が追放された事実は国中に知れ渡ったらしい。


 もともと精鋭部隊のメンバーは、国中から注目を集める存在だけあって、常に噂の的だった。

 騎士職の最上位に位置する精鋭部隊員は、尊敬されるとともに、やっかみの対象にもなりやすかった。

 だから、今回俺の身に起きたことも、面白おかしく広められてしまったのだろう。

 相手にしても仕方ない。


「フレデリカ、出ようか」


 ところが、なぜかフレデリカは無言で立ち上がると、男たちのテーブルへ近づいて行ってしまった。

 目の前に立ったフレデリカを見て、男たちが一瞬静かになる。


「エリアスは無能ではありません。撤回してください」


 かわいらしい声とは裏腹に冷たい口調できっぱりと要求する。

 突然の出来事に驚いたらしく男たちは目を見開いたが、すぐに腹を抱えて笑いはじめた。

「ぶははははっ! なんだよ、無職で無能って本当の事だろうがよ! お前も男を見る目のねえ女だな」


 まずい。

 俺は慌ててフレデリカを止めにいった。


「俺は平気だから、行こう」

「だめ。あなたが嘲笑されることを、私は許したくない。――ちゃんと撤回してください」

「やだね。そんな奴より俺の方がいい男だろうがよ」


 下品な笑いを浮かべた男は立ち上がると、強引な態度でフレデリカの肩を抱こうとした。


「おい、いい加減にしろよ」


 さすがに我慢の限界だ。

 俺は、男がフレデリカに触れるより先に、その腕を捩じ上げた。


「いてぇええ!!!」


 男が情けない悲鳴を上げるが、力を緩めることなく床の上に押さえつけてやった。


「俺のことをどういおうが別に構わない。でも、彼女を悪く言うのなら、あんたたちの相手をさせてもらう」

「ひぃいい離してくれええ腕が折れちまうよおおお」

「――待て」


 男の仲間のうち、一番奥の席に座っていた赤毛の男が立ち上がる。


「相手なら俺にさせろよ」


 よく見れば、商人のような恰好をしているもののガタイがいい。

 こいつは、商人たちに雇われた傭兵か。

 単なる雑魚ではないことは一瞬でわかった。

 赤毛の男がにやつきながら、扉を示す。


「表に出ようぜ」


 俺は頷き返し、男の後に続いた。

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