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新加入の竜騎士

「じゃあまたなルウル」

「昨夜のお食事美味しかったわ。ありがとう」

「いえいえ、またいつでもいらしてください。そうだ、私も出るところなので途中までご一緒しても良いですか?」

「もちろんいいよ。僕も今晩はガラスの再取付に入るし」

「あ…えぇと、良いのかい?」

 ゾロゾロと部屋を出て行こうとする熟年層たち。こっちを心配してくれるのはロロックだけか!

「中が見れないんじゃあ何にも分からん。アレクシスには本の作成を急かしておくから」

 足も止めないとは!

 それはちょっとあんまりじゃないの?!

 俺は急いでメルシアの前に回り込んで部屋から出ないように進路を塞いだ。

「そんなに早く帰りたいのか! ちょっとくらい何か教えろよ! こっちはゴタゴタが落ち着くまではと思って大人しく待ってたんだぞ!」

 ……メルシアがあからさまにめんどくさそうな顔をしやがった。

「な…何事ですか?」

 まだ部屋に入れていない竜騎士がロディに尋ねている。

「……うん、立て込んでいるね。ちょっと待っていようか」

「はぁ……わかりました」

 驚かせてごめんだけど、こっちも大事な話があるんだ。

 俺はメルシアとグレイスを交互に睨んだ。

「甕の鍵の事を教えてくれ」

「…強くなれば多分なんとかなるさ。なぁグレイス」

「え、ええ……」

「雑! しかもなんの情報も増えてない!」

「落ち着いてくれ、メルシアは口は悪いが悪気はないんだ」

「宥め役に回ってないであんたもちょっとは自分の孫の将来を心配しろよ!」

「うっ…」

 ロロックが俺の言葉にのけぞった。

 キツいメルシアの傍にいるくせに相変わらず打たれ弱い人だ。それに気づいたメルシアがロロックの背に手を添えた。よしよしと摩る。

「ごめんなさいね、あの時私がしっかり確認も出来ずに慌てて出て来ちゃったからよね…」

 二人をフォローするようにグレイスが間に入るが、メルシアがそれを退かした。

「グレイスから聞いた曖昧な話だけでは判断が付かないし、そもそも見たからってすぐにどうすりゃ良いか分かるとも限らない」

「……あんたらを頼っても無駄ってことか?」

「そうは言ってない。準備が整えばもう一度見られるし、なにか思いつくかもしれない。あたしらにはそれなりに知識も人脈もある」

「……」

「魔法書、早めに作って貰うわね? 大丈夫よ、譲渡の本よりは簡単なはずだから」

「…………出来たらすぐ見てもらえるか?」

「我儘な孫だな。こっちは善意で動いてるってのに」

「! もう、やめなさいメルシア」

「言っておくけどね」

 メルシアが数歩俺に近づき、屈む。俺と同じ高さに顔がきて、目をじっと見てくる。

「…………なに」

「死に急いでる孫に進んで協力したがるばーちゃんなんかいないんだからね」

「……」

 ……本当にこの人は……。一番言いたいことは最後じゃないと言わないんだな。

 なんだかんだ理由を付けて先延ばしにするつもりだったんだ。

 明らかにすることはもう少し待っても良いんじゃないか、と言えば済むことなのに。

 酒に酔ったメルシアが俺の事を嬉しそうに撫でまわしていた時の事を思い出した。

「……わかってる。だから俺も言っておく。俺は早死にしたいんじゃない。死ぬために出来ることを全部やりきるために急いでるだけなんだ」

 俺はメルシアの腰に手を回し、抱きついた。

「約束するよ。いつ死ねる時が来ても、今度はあんたらより先には死なない」

「……なんだいそれ…」

 メルシアが俺を抱き返す。

「せいぜい長生きしろよ、ってことさ」

「……あの、俺も良いかな?」

 ロロックが恨めしそうに見ていたので、手を伸ばして呼び込む。

「あら、じゃあ私も…」

「ダメだ」

 混ざろうとしたグレイスにメルシアがピシャリと告げた。

「残念だったね。下心が見えちゃったんじゃないの?」

 とワフが笑った。

「変な事言わないで。私が好きだったのは昔の彼の姿なんですからね」

「早く情報が欲しいのは無駄に死なない為だから」

 俺がそう告げるとメルシアはフン、と笑って腕をほどき、ポン、と両肩を叩いて離れた。

「……わかったよ。まったく、可愛い孫だね」

「ありがとう」


「さぁ、それじゃあ今度こそ行こうか。ルウル、あんた時間大丈夫なの?」

「まさか! さっきからかなり焦ってましたよ!」

「はははっ、先に言うけど僕は走れないからね」

「転送してやろうか?」

「王都内での転送行為は違法です! …近くの馬車乗り場までなら走れます?」

「うーん、どうかなぁ……」

 などと言いながら5人が部屋から出て行くのを廊下に出て見送る。

 外に出てからもワイワイと話がはずんでいるようだった。

 急いでるんじゃないのか、まったく……。

「もう良いかな?」

 振り返るとロディと竜騎士がその場に佇んでいた。

「あ、お騒がせしました。どうぞ」

 二人を先に部屋へ促す。

 後に続いて部屋に入ると、みんな俺を無言で見てくる。

「…なんで俺見られてるの?」

「いや、スゲーなーと思って」

「うん、メルシア様やロロック様たちにあんなこと言えちゃうんだもんね」

 ロロック信者たちには刺激が強かったのか……。夢を壊さないように今後は気を付けよう。

「さてとー、ササお腹すいたー。みんな揃ったし、ごはんで良いよねー?」

 入れ代わりでササが従者を呼びに行こうと廊下へ向かう。

「お供しますご主人様!」

「要らんー!!」

 後ろにくっついていた下僕?……が蹴り飛ばされた。

「……平気か?」

 近くに行くと、オザダはそれだけ聞いてきた。

「大丈夫。やれる事をやるさ」

 そう答えると、

「そうだな」

 と頷いた。



「改めて、新しく入った二人に自己紹介をしてもらおうか。ではこちらからで良いかな?」

 デザートまで食べ終えたササを確認してからロディが隣に座らせていた竜騎士の男に注目を集める。

「はい。……ええと、竜騎士、Sランクのアデギウスです。出身はハルクデリウム、少し前までソージュという勇者のパーティにいたんですけど、そいつが家業の貿易商を継ぐことになって解散してしまい、新しい仲間を探してました。よろしくお願いします」

 パチパチパチ、と歓迎の笑顔と拍手が送られる。騎士職だけあって礼儀正しい。

「そういえばドラゴンは? どこかに預けてきたの?」

 フィリーアが質問すると、アデギウスは左の二の腕に付けているリングに手を添えた。

「ここに待機中です」

 よく見るとリングにはめこまれている透明な半球体の中で、小さな銀色のドラゴンが動いていた。

「かわいいー!」

 こちらの様子を気にして球体の中を飛び回る小さなドラゴンは声を上げたササじゃなくてもかわいいと思ってしまう。

「なにそれ!」

 テーブルに手を付いて前のめりになるフィリーア。

「相棒のセシルです。前はアイテムと一緒に倉庫に収納してたこともあったんですけど、寂しがって入るのを嫌がるようになってしまって…この腕輪はコイツ専用に作ってもらいました」

「専用にすることで魔力差制限が掛かってないのかな?! すごく良いねそれ! あとで見せてもらえない? ね、オザダにもこういうのあったほうが便利だよね?」

「…そうだな、いつでもガララの様子を見られるのはありがたい。」

「マグマにも作って欲しいな。出来たら誰か俺の代わりに付けてくれない?」

『腹減った』とうるさい時に入れてしまえば静かになりそうだ。

「マグマが嫌がると思うが…」

「庭にいるのはお二人のドラゴンと馬なんですか?」

「馬がガララでオザダの相棒、ドラゴンはルイスくんの相棒のマグマ。…あと、キンちゃんは誰のとかあるんだっけ?」

「キンちゃん?」

「金のキンちゃん。庭にいる子さ。アレはオザダ預かりだよな」

「そうだ」

「えっと、それはオザダさんの恋人という意味ですか?」

「…………………ハ…はァ?」

 こんなに間の抜けたオザダの返答を聞いたのは初めてだ。

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