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 魔法も魔法効果の付いた武器も扱えない俺には地道にプチプチと処理していくしかやりようがない。せいぜい高速で通り過ぎていく虫たちの魔石がどこにあるかを見極める修行くらいだ。

 身につくのは『根気』と『虫耐性』だろうか。

「どうせオザダが全部片づけてくれるんだろうしなぁ……」

「焼く? 凍らす?」

「お前、もう食うのは良いのか? …っと」

 見ると、もう首輪が赤色に光っていた。これは使わないとだな。

「炎も氷もどっちも強いのは分かってるしなぁ……じゃあ水はどうだ? 出せるか?」

「水を吹くのか?」

 そう言ってピュルルっと口から水を吹いて見せる。

「お、良いね。じゃあ先ずはお試しで…………」

 俺はマグマに思いついたことを順に指示した。


「オザダ!」

 俺たちは大群の進行を食い止めているオザダのもとへ戻ってきた。

「どうした、最後尾でも見えたか?」

「それはまだ見えないけど、マグマがまた一つ技を覚えたから見てくれよ」

「これをやりながらでも構わないか?」

 会話の最中もオザダは駆除を止めていなかった。

「良いよ。出来るなら」

「?」

「よし、じゃあ本番だぞマグマ!」

「おう!」

 元気に返事をして、マグマは上空へ。

 そして地上に向けて凍る息を吹きながら移動し、群れの進路を絶つ巨大な氷の壁を生み出した。

 バッタは避けることなく氷壁にぶつかり、どんどんと草の上に積み重なっていく。

「ルイス、それではだめだ。あいつらはお互いを食って…」

「大丈夫だからもうちょっと見てて」

 俺は言葉を遮り、そのままマグマに任せてもらう。

 氷の壁で後方を除いた三方を囲む。

 後続も途切れることなく、弱った仲間を取り込もうとして続いて飛び込んでくる。

 弱ったものは食われ、食ったものは地面へ卵を産み、産まれてもギュウギュウの仲間たちの圧迫によりまた消耗し、また食われる。

「マグマ、そろそろ一回閉めよう」

 俺の合図でマグマが壁の上部を塞ぐ氷の天井を作り、最後に後方の壁で塞ぐ。氷の檻の完成だ。

 後方の壁は次の箱の前側の壁となり、同じ作業を繰り返して氷の檻が繋がっていく。5つ目で群れの最後の一匹まで収まりきった。

「そのままいけるかー?」

「平気~!」

 マグマは天井の真ん中を熱して穴をあけ、そこから滝のような水を吹き入れる。

「! 水攻めか」

「そう。どうかな?」

 虫が密室の中で暴れ出した。

 どんどん水に侵食されて、共食いしている余裕もない。

「マグマの魔力頼みの力業だが有効だ」

「こいつらだから上手くいったんだ。共食いの性質が無かったらもっと大変だっただろうし、そもそも知能があるヤツだったら氷で進路塞ぐ前に逃げられちゃっただろうし」

 虫たちは次第に動かなくなっていき、遂に漂うだけになった。

「攻撃自体は威力もあんまり無くて足止め程度っぽいんだよな。水ってそんなに使いどころ無いかも」

「そんなことは無いだろう。水で流して一箇所に追い詰めてから凍らせるとか、息を吸い込む場所一点を集中して放水し続けるとか、使い方次第では役に立つだろう。火に耐性がある氷属性や土属性なんかには効くだろうしな」

「へぇ………」

 ここまでは見たことあるような生き物相手だからあんまりピンと来てないけど、強い魔物になって来ると動物じゃない魔物っていうのにも遭遇していくんだろうな。

 ……土属性って何? 泥団子とかが体当たりしてくるとか?

 などと想像しているうちにマグマが仕事を終えた。

「疲れたー。腹減ったー」

「お疲れー。バッタ食う?」

「うぇー。違うもの食いたい」

 相当疲れたらしくフラフラと力なく飛んできた。当然ながら首輪の魔力は使い果たされ、元の鎖の色を久々に目にした気がする。

「この辺は何が獲れるかな?」

「腹がへったのか? 南へいくらか下がれば獅子が獲れるが」

「俺アレ好き!」

 獅子と聞いたマグマがもう食べる気満々になってしまったので俺たちは南へ向かうことにした。

 どうにか飛んでついてくるマグマだったが、回復が追い付かないようで時折ガララのスピードを緩めながらの移動になった。マグマの『平気』は鵜呑みにしてはいけないな。またひとつ勉強になった。


 以前獅子と戦ったときに似た丘の並ぶ景色が見えてくる。

 ターゲットはすぐに見つかり、2匹の獅子が小鹿を追いかけているところだった。

「あの獅子なら俺がやれる」

「ここで降りるか?」

 丁度いいことに魔石はこちらから見える側の肩と後ろ足の腿だ。

「このままやってみたい」

 それを聞いてオザダがのけぞるようにして俺との距離を取った。

 俺は獅子にゆっくり近づくガララの上で弓を構える。

 揺れるが、慣れれば合わせられる。

 一匹が跳んで小鹿に噛みついた。抑え込むために踏ん張る後ろ足を目がけて一矢放つ。当たったが僅かにずれた。もう一本続けて放ち、今度は命中した。

 それに気付いたもう一匹の獅子が、こちらに牙を見せて向かってくる。正面から来られると魔石が見えない。

「回り込める?!」

「もちろんだ」

 オザダがガララを操り、獅子の攻撃をかわせる距離で魔石が見える絶好のポジションに入ってくれる。

 それでも素早く避ける獅子に三射躱されてしまい、四射目でやっと魔石を砕けた。

「うーん……」

 狙っているのが気付かれてからは当てるのが格段に難しくなるなぁ…。

 オザダが『上出来だ』と言って俺をガララから降ろしてくれた。

「慣れればもっと精度は上がる」

「…そうだな。じゃあ、飯の準備をしようか」

 俺は弓を短剣に持ち換え、横たわった魔物たちを手早く捌いた。

 今日の遅めの昼食は獅子鍋に鹿肉まで入った贅沢鍋。

 その殆どをマグマが平らげた。


 その日はそのまま丘で獅子を相手にオザダの指導を受けることにした。前回借りた槍をもう一度出してもらい、オザダを真似てみる。

 槍の構えや持ち方、突きや打撃への動き、攻撃のいなし方など、長い槍を扱うための動作は独特で難しい。

 単独で行動していた獅子を見つけ、二人で囲む。獅子はオザダに向かって吠えた。

 珍しい。いつもは俺が狙われるのに…と思ったが、よく考えればオザダに後ろを取られる方が危ないというのが理由だろう。

「肉眼で魔石は見えるか」

「見えない」

 獅子の前後で確認し合う。魔石は体内の様だ。

 するとオザダは槍を構えたまま目を閉じた。そして、

「頭の付け根、真ん中だ。骨の近くだから深めに刺せ」

 と言って獅子の大きな左前足に槍を突き刺した。獅子は暴れたが穂は前足を貫通していて、地面にまで刺さっているせいでその場から動けない。その隙に俺は獅子に飛び乗り、言われた場所を槍で突いた。

「あ…」

 獅子は途端に力を失った。

「今の、魔石に当たったのか? なんで?」

「騎士がSSランクになると使えるようになる『一点』という技だ。魔石のある場所を見ることが出来る」

 おお…SSランク…………。

「甕一つ分の場所は取られるが、便利な技だ。魔力無しで弓を極めるなら先に取ってもいいかもしれないぞ」

 そうかー、便利な技かー。

 …………。

 …………。

 …………ん?


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