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飛ばない鳥

「ここは?」

「フルフラートから北に少しのところだ。沼地が無いルートだから夜は町の宿まで戻って止まれば良い」

 乾いた土地の所々に丈の低い木々や僅かな草地が見える。

 岩が階段状になっている一角に荷物を降ろし、装備を整える。

「どんな魔物が出るんだ?」

「『飛ばない鳥』」

 オザダが遠くの茂みを指さした。

 大きな首の長い鳥が何十羽かでまとまっているのが見えた。

 あれは……

「危ないヤツじゃないか」

「そうだな。無抵抗で蹴られたら骨をやられるだろう」

 ああ、やっぱりか……。

「ルイスは上から狙った方が良いだろう。それと、一応長さのあるものも渡しておく」

 オザダは自分の荷物の中から短めの槍を取り出して俺に手渡した。

「倉庫から出しておいた。二槍流用だから普通のより短くてルイスにも持てるんじゃないかと思って」

「うん、重い…けど、大丈夫。ありがとう」

 俺の力だから片手は無理だけど、練習用にはちょうどいいサイズかもしれない。

 ………扱い方が全く分からないが。

「それより『倉庫』って? どこかに借り…て、るのか?」

 聞きながら気づいたが、もう口から出てしまっていたので仕方がない。

「俺の『倉庫』はこのガントレットだ。入れるジャンルは問わないが個数制限があって全部で200まで入る」

 やっぱり各々収納系のアイテムは持ってるんだなぁ。俺も欲しいなぁ……。


 あ。

 すげー良いこと思いついた。

 はやくフィリーア様に会いたい。


「じゃあこっちに連れてくる。やれそうならどんどんやってくれ」

「わかった」

 俺は岩をもう数段上り、弓を準備する。

 ガララに乗ったオザダが緩めのスピードで飛ばない鳥へ向かっていく。

 草を食んでいた手前の一羽が外敵の接近に気付いて頭を上げる。そしてその仕草に反応して他の鳥達も一斉に顔を向ける。

 短い両羽を拡げて威嚇の声を上げる魔物の群れ。ガララは前進を止め、足踏みしながら方向を変える。誘っているようだな。

 ほとんど同時に走り出す。

「速………」

 遠くに見えていた群れがどんどんこちらに迫って来る。蹴り上げる土埃が視界を悪くする。

 魔石が見えるヤツは……駄目だな。全然見えない。とりあえず数を命中させることに専念しよう。

 連射を試すため、弓を握る左手に矢も数本まとめて握る。指が短いのであまり持てない。握りがしっかりしないので射っても飛ぶには飛ぶが安定しない。手前に落下したり、鳥に当たったものも分厚い羽の層に弾き返されてしまった。

「駄目か……」

 一羽も仕留められないまま群れはガララを追いかけて射程距離から遠ざかっていく。

 ガララは大きく弧を描くように、群れを誘導しながら進路をこちらへ戻している。

「もう一回、か。………マグマ、ちょっと手伝ってくれるか」

「なんだ?」

 隣で見ていたマグマを呼び、矢を見せる。

「この鏃のとこに火を付けられないか? 矢を全部燃やしちゃ駄目だぞ」

「こうか?」

 マグマが小さな火の玉を吐き出す。それは玉の形のまま鏃を包んだ。

「良い感じ」

 戻ってきた群れの先頭を狙う。羽が邪魔しない胸の位置をめがけて射る。

 刺さった瞬間に火は胸の羽毛に燃え広がり、混乱して暴れたことで後続にぶつかり、他の鳥にも引火して群れは一気に乱れた。

「凄いな。これ使えるよマグマ。」

「俺が直接あいつらを燃やしたほうが早いけど」

「そう言うなよ。俺も強くならなきゃいけないんだからさ」

 もう一本マグマの前に矢を差し出し、さっきと同じ火矢を作る。

「今度は頭を狙ってみよう」

 燃える羽毛が無い場所への効果を確かめる為、混乱する仲間たちに進路を阻まれて動けなくなっている一羽の頭部に向けて放つ。よし、的は小さいがしっかり狙えた。と安堵した瞬間、鳥はグイン、と首を曲げて矢を避けた。

「なっ」

 こちらの攻撃が見えていたのか。狙われた鳥が仲間を掻き分けて発射位置を確実に捉えて走って来る。マグマにもう一度火矢を作らせ急いで放つ。今度は胴体を狙ったが正面からだったのであっさりと躱される。鳥はどんどん近づいてくる。気づくと引火を免れた他の奴らも後に続きスピードに乗って向かってきている。

「うわ」

 俺は急いで立ち上がる。

 鳥は岩の段を器用にジャンプして上って来る。

 マグマが横薙ぎに炎を吹き仕留めていくが、跳んで躱す十数羽が止まらない。

 突進してくる鳥を何とか避けて矢を放つが一瞬身構えさせる程度で避けられてしまい役に立たない。

 矢は使い果たし、握っていた弓は蹴り上げられて飛んで行った。

 俺は近くに置いておいた槍を握り走った。

 マグマが空に飛び、壁を作るように広範囲に炎を吐く。それでも殺気立っている数羽がまだ追いかけてくる。

 段差に躓き転んだ。振り返ると目の前に蹴りの体勢に入った鳥がいた。俺は夢中で握っていた槍を突き出す。先端が羽毛の中でカツンと異物を突いた。

 魔石?!

 鳥が攻撃を止めて後ろへ飛び退いてくれたのでその隙に距離をとる。

 しかしもう逃げ場がない。

 岩の縁に追い詰められてしまった。

 もう一度魔石を突ける実力はない。運もないだろう。

 このまま蹴りを食らったら命も危ないし…この段と呼ぶには高すぎる落差を飛び降りたほうがまだましか……。

 ジリ…と鳥が地面を踏みしめる音がし、俺が覚悟を決める直前、下から飛んできた一本の槍が鳥の首の根元を貫き、その勢いのまま鳥ごと数メートル先まで飛んで行った。

「大丈夫か?!」

 オザダが岩を上ってきた。

 そして俺の前に立ち、ガントレットから放出したもう一本の槍を構えると、最後まで辿り着いた2羽を瞬時に撃破した。

「怖かったー…」

「よく対応出来ていたじゃないか」

「……かなり必死だったんだけど」

「そうか?」

 この退魔団の人たちが俺の危機感を全く感じ取ってくれないのは何なんだろうな。

「コレ食っても良いよなー?」

 マグマが羽毛が焼け焦げている鳥に追い焼きを入れている。返事を聞く前からもう食う気じゃないか。

「俺たちも食うから丁寧に火を入れるんだぞ」

「任せろー」


 飛ばない鳥の焼き鳥は味も歯ごたえも最高に好みだった。

 マグマも気に入ったらしく、魔力がほぼ満タンになるまで食った。

 …また少し大きくなった。

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