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勇者ロロック様

「ルイスが居なくなった、ってご両親が凄く心配してたのよ」

「どこ行ってたんだ? メルシア様と一緒だったんだろ?」

 フィリーア様とジェイマーが駆け寄ってきて俺を囲んだ。

 ササは遠くまで見に行ったオザダを迎えに行っている。

 そしてアレクシスとエマルダは村の人たちに謝罪とお礼を言って回っている。

「ごめん、多分もっと早く帰るつもりだったんだと思うんだけど」

 チラ、と振り返るとメルシアが道に出てきたところだった。

「メルシア様! ……と、えーと?」

 ジェイマーが背後にもう一人見つけて声のトーンを落とした。

「ガイ、あたしたちは今晩はグレイスの所に行くと伝えておいてくれ」

 ……あんまりいい雰囲気じゃないまま逃げるのか。

 まぁ、これ以上拗れて明日の式に影響しても可哀想だし、仕方ないか。

「わかった。明日ね、『おばあちゃん』」

 俺は頷いて返事をした。

 俺はもうガイではない。自分たちはその時代に戻った気分なのだろうが俺は違う、という意味を込めて。

「……じゃあなルイス」

 メルシアは今度は孫の名前を呼び、ロロックとともに光の中へ消えた。


「どういうことだ? メルシア様と一緒にいた男は何者だよ?」

 二人が消えたのになぜかひそひそと聞いてくるジェイマー。

「ロロック」

「は? 誰って?」

 教えてやったのに、ジェイマーはポカンとした顔で俺を見る。

「ロロックだってば。知らないのか? 勇者ロロック。俺でも知ってるぞ。……あれ? 俺だから知ってるのか?」

 隠居生活してたような元勇者の名前なんて今の若い人は知らなくても無理ないのか。メルシアやグレイスはまだ現役だからな。

「う……うそ」

 フィリーア様が呆然としている。そして、ジェイマーはグラッと前かがみの体勢になり、俺の両肩を掴んで容赦なく前後に揺らす。顔が近い。

「ロロック……? お前今ロロックって言った?!」

「い、言った、けど、なに?」

「……」

「……」

 今度はピタ、と止まり、フィリーア様と目を合わせる。

「……見た?」

「……ちょっとだけど、見た」

「そこにいたよな?」

「うん。いた。立ってた」

「凄くね?」

「うん……凄い……すごいいぃ!!!」

 フィリーア様が飛び跳ねだした。何事?

「ひゃ~~凄いよぉ伝説の勇者様だよぉ~っ! やだもうちゃんと挨拶すれば良かったぁ~~~」

「もっとちゃんと見ておけば良かったなァ……けどやっぱオーラあるよな!」

「うんうん~!」

 なんだ、やっぱり有名なんだな。

「ルイス、ロロック様は何の用で来たんだ?」

「あ、うん。……ちょっとな。明日また来ると思うよ。」

「本当?! うわ~握手してもらえるかなぁ?」

「俺、家にロロック様が使ってた聖剣のレプリカあるんだぜ。サイン入れてもらえねぇかなぁ……」

「いいねそれ! 飛んで持ってきておいたら?」

 大はしゃぎの二人はなかなかクールダウンせず、外の騒がしさに気付いたシェマが家から出てきて加わり、そうしているうちにササとオザダが戻ってきて更に盛り上がった。

 それにしてもオザダまで興奮の声を上げるとは……ロロックの凄さが窺える。


 と。

 それも大変なことなんだけども。

 こっちの問題をどうするべきかと。

「なぁマグマ…」

「なんだ?」

「……」

「なんだよ?」

「……」

「呼んでおいて何なんだよルイス!!」

 これは……

 これは戻せないのか?



 次から次へと村の大人たちが俺の生存を確認しては帰っていく。

 子どもたちも心配してくれていたらしく、ケビンが無言で俺の頭をはたいた。

 口を真一文字に結んで、目を赤くしていた。


「ガオゥ!」

 捜索には加わらないようにとアレクシスに念を押されたシェマが、マリーを飛ばしてくれていた。

 それが凄いスピードで帰ってきて、

「んぐぅ……っ~~~~………………」

 俺はマリーの躾を体感した。

 あー、ドラゴンの口の中はこんな感じなんだなぁ…………。

 両親からは軽く悲鳴が上がり、ジェイマーは爆笑していた。

「ごめんマリーさん。心配してくれてありがとう」

「ガウ。」

 べっちょり濡れた俺をマリーはベロリと舐めてくれた。

 また濡れた。

「カッコ悪いなぁルイス」

「……」

 面白そうに笑われて気分が一気に悪くなる。

「お前が笑うな」

 ペチ、とマグマの頭を指で弾いた。

「何するんだよっ」

「うるさい、お前あんまり喋るなよ」

「……ルイス? どうしたの? マグマと喧嘩?」

 シェマが俺とマグマの様子が少しおかしいと気付いたようだ。

「あー、ええと…マグマの事でちょっと相談したい、かなぁ…って」

「良いわよ、なに?」

 シェマは快諾してくれた…が、両親がいる手前、細かい話が出来ない。

「今日はもう疲れちゃったから、今度でいいや」

「そう? わかったわ」


「うちの母と息子がご迷惑おかけしました。どうぞ、そろそろ休んでください」

 エマルダがその場に残っていた人たちに頭を下げ、アレクシスと俺もそれにならう。

 それを合図に、残っていた大人たちが撤収する。

 退魔団の面々は今日は二手に分かれることになっていた。

 シェマがマリーを竜舎に戻し、ササとフィリーア様を連れて家に戻る。

 そして、オザダとジェイマーは俺の家にお泊りだ。

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