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夕食会

 翌朝旅立つ前、家の横の竜舎で三人は珍しそうに深紅のルイスを見ていた。

「強そうだわ」

「綺麗な色ね」

「…けどあまり魔力が無いようだ」

 ロロックがルイスに近づいた。

 ルイスは閉じていた目を片方だけ開けて三人を一瞥し、またすぐ目を閉じた。

 更に近づいたロロックがルイスの後ろ足を撫でたが、ルイスは何も反応しなかった。


 竜舎を出たロロックは、俺に集落へ移るように提案した。

「魔物の追い込みがうまく行かなかった場合、こちらへ流れてくるかもしれない。念のため落ち着くまでここから離れた方が良いと思うんだ」

「私が集落まで送ろうか」

 魔法を使えばすぐだ、とメルシアが手を上げる。けど俺はこの場を離れる気がなくて。

「あー、でもまぁ、なんとかなるから大丈夫だよ」

 わざわざ逃げてまで生き延びようとは思っていなかった。

「もし強いヤツに襲われてもその時はその時だしさ」

「そんな軽く考えないで…本当に何かあったらどうするの? 魔物が怖くないの?」

 グレイスは少し寂しそうな顔をした。

「そしたらまたきっとどこかに生まれ変わるだけなんだし。今までもそうだったしさ、どうやって死んだってまたどうにか死ぬまで生きるだけさ」

 俺は、初めて逢えた退魔師たちに少し期待をしながらそう言った。

 特別な人たちなら、俺のこの生まれ変わりの理由を知っているのではないかと。

 繰り返し生きている俺の意味を教えてくれるんじゃないかと。

 けど、俺の気持ちを、言葉の意図を読んでくれることは無くて……。

「俺はずっと決まった場所にいられない生活してるから、代々受け継いできた守るべき場所があるガイが羨ましかったりするんだけど」

 ロロックはそう言って俺の家や竜舎、ゆっくり畑まで見回した。

「『死ぬかもしれない』って思ったときにさ、本当に後悔しないかを考えてみてほしい」

 それはきっと、ロロックにはそういう経験があったということだった。

 何かを守ろうとして戦って、引き換えに自分の命が危うくなった時。

 彼はどちらとも守れたのか。それとも自分の命を優先したのか。



   そういうのはもう、経験済みなんだよ。



 結局俺は三人が出発するまで曖昧な返答でその場を繕い、その日以降もそのままそこで過ごしていた。そして化け物みたいに強い魔物が現れて、あっけなく喰われた。


「あの時追っていた魔物は予定通り退魔師総出で取り囲み、追い詰めた。誰も戦ったことのない相手だったからどんな能力を持っているか分からなかったのもあるが、自分たちが多勢だったことで全員が明らかに油断していた。けどもう一歩というところでやられたのさ。あいつは、八方に弾けた。『分裂』の力を持ってた」

 全員で一階の酒場へ下り、夕食となった。

 テーブルは二卓に分かれ、ロディと若い女性陣はシェマを取り囲んで想い出話を語りあい別れを惜しんでいる。そして俺とメルシア…そして、なぜかガッチリした騎士っぽい男がメルシアの横で酒を飲みながら口を挟むことなく黙々と食べ物を口に運んでいた。ジェイマーはなぜか他のテーブルで町の男たちと盛り上がっていた。

 マグマはこういう場は少し心配なので食糧を持たせてマリーへ預けてきた。

「分裂した魔物をそれぞれ追いかけて…ガイ、あんたの家にまた行ったんだよ」

「…」

「家にも畑にもいなくてドラゴンも見当たらなくて、最初は私たちの助言を聞いて山を下りてくれたのだとホッとしたんだけどね」

「出迎えられなくて悪かった」

「そうだね。しばらくして山道に大量の血が滲みているのを見つけたよ。ついでに言うなら魔物には集落まで入り込まれてしまって犠牲者が大勢出た。ガイがあそこまで逃げてたとしても、無事だったかは正直怪しい」

「そう…か」

 俺を喰うだけで満足してくれはしなかったか……

 山奥に一人暮らしとは言っても、生活に必要なものすべてを自分だけで賄えるわけもない。野菜や魔物肉を集落に持ち込み、代わりに日用品を譲ってもらったりしていた。いつ顔を出しても丁度夕飯を作り過ぎて分けてくれるばあちゃん。俺を見かけては一杯付き合えと声を掛けて来て、飲み終わる前に自分が酔い潰れて俺が家まで送る羽目になる織物屋のご主人…。双子が生まれたばかりの夫婦も暮らしていた。あの家族は……。

「あの時の出来事は私たちにとっても後悔としていつまでも残っている。そのせいで……いや、これ以上はまたいずれ、だな」

 ぐい、と青い酒を喉に流し、メルシアは表情をガラリと変えた。

「25年も前の話で暗くなっても仕方ないね。ここからは身内として語ろうじゃないのよ、ルイス」


「初孫は特別可愛いって言いますもんね~」

 戻ってきたジェイマーがさっきまで俺が座っていた椅子に腰かける。特別嫌なニヤけ顔で……。

 ジェイマーだけではない、席を分けている他の団員も俺たちを見てニヤニヤニヤニヤと……。

「そりゃそうだけどそれだけじゃないよ~。見てみなよこの可愛らしい耳! 鼻! 目! くち~~~っ!」

「ん~~~っ!!!」

 孫との初対面というものは、そりゃあ嬉しいもんなんだよ。抱き上げて撫でまわして自分が子育てした頃を思い出したり今度は我が子がこの子を育てていくのかとしみじみ思ったりするもんなんだ。

『膝の上においで』とメルシアに手招きされた時にも、自分も昔は孫をよく乗せたな…と特に気にもとめなかった。

 けど……。

 すみません、今では後悔をしています。

 誰か助けてください。

 俺の魂はお祖母ちゃんに吸われて抜けてしまいそうです。

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