表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/296

しつけ教室

 朝食をとりながら、俺はマグマとの前世を二人に説明した。

 その間、マグマはせわしなかった。

 マリーの大きい背をよじ登ったり滑ったり、目の前に飛んで行ってアピールしてみたり。

 相手にされないと見るとこっちに狙いをつけ、視界に入るようにふわふわと飛び。

 シェマが膝の上に置いて撫でてやるが、すぐに飽きて走り回る。

「ドラゴンも生まれ変わりがあるのね。知らなかったわ」

「ルイスに呼ばれたのかもな?」

「そうなんだろうか」

「ギャオオォ!!」

「キィィィッ…」

「!?」

 突然の咆哮と断末魔のような奇声が響いた。

 

 みんなが一斉にマリーを振り返る。

 マグマが地面に仰向けに押し付けられていた。

「マリー?!」

 シェマが慌てて二匹の元に駆け寄る。

「どうしたの? こんな小さい子にこんなこと…」

「ごめん、きっとこいつのせいだ」

 宥められてマリーの抑える前足の力が緩み、マグマが解放された。俺はマグマを動かないように抱きしめて固定する。マグマは僅かに震えていた。

「こいつ昔っからアホなんだ。生まれ変わってもやっぱり治ってないみたいだ」

 マグマが動けないことを確認したマリーはしきりに長い尻尾を舐めた。

「じゃれてるうちに噛んだのかもしれない。少しくぼみが出来てる」

「ごめんマリーさん」

「許してあげて、まだ子供なの」

「グルルルルル……」

 マリーは喉を鳴らしてシェマに顔を摺り寄せた。

「シェマ、今日はドラゴンのしつけ方教えてやんなよ」

 ジェイマーは騒動に加わらず食事を続けていた。

 胸元で俺の顔を見上げるマグマと目が合う。今は体格的になんとか抑えられるけど、きっとすぐに追い越されてしまう。

「けど私はマリーに手を焼いたことなんてないし…」

「…じゃあマリーに任せてみるとか?」

「マリーに?」

「ドラゴンはドラゴン同士、じゃね?」

 確かに。前世の記憶があるこいつに今更何を言っても効果がないのは目に見えている。

「お願いします、マリーさん」

 俺は両手を目いっぱい延ばしてマグマをマリーに差し出した。手の平で、マグマが硬直するのを感じる。

 マリーはマグマを正面から睨みつけ、大きく口を開けた。

 そしてガプリとマグマの上半分を口の中に納めてしまった。

「!」

 全員が息をのむ…が、口の中でマグマの騒ぐ籠った声が聞こえたので緊張感は一瞬で解けた。

 俺はマグマから手を放した。

 下半身だけマリーの口から出たマグマが足をバタつかせている。

「えっと…マリー?」

 シェマが狼狽えている。

 マリーはシェマに目をやったが、すぐに正面を向いてすました顔で伏せの恰好をとった。

 暫く黙って見ていると暴れていたマグマの動きが鈍くなり、ようやくマリーが口を開けた。

 ベチャ、と濡れたマグマが地面に落ちた。もぞもぞと起き上がったと思ったら、すぐさまギャーギャーと叫び出した。

「威勢がいいな」

 ジェイマーが笑った。

 と同時に、辺りに突風が吹き体が浮きそうになる。

 気付くとマグマの姿が消え、マリーの右の前足が左へ向いている。その前足が向いた先に立っている木の下に、マグマが転がっていた。

 さすがに心配になって見に行こうと踏み出したところで進路を塞ぐようにマリーが立ち上がり、ノソリとマグマに近づいていく。

 マグマはすぐには動けず、大人しくマリーから放たれた炎に包まれた。


 炎が木々に燃え移りそうになったところで、マリーは吹雪の息を吐いた。

 地面の草と木の表面を焦がした火は消え、赤いドラゴンも今度は叫ぶことは無かった。

 マリーが再度口を開ける。それを見て怯えるマグマがか細い声でキュゥキュゥと鳴く。

 マリーは逃げられないマグマに更に顔を寄せ、ベロリと舐めた。

「ギャオゥ、ギャオ、ギュルル…」

「ピギ……キュゥ……」

「ギャオ、ガガゥ、ガゥ」

「キュゥ…キュゥ」

「………愛の鞭からの説教か?」

「……貴重なものを見ている気がするわ」

 二匹の会話が終わるまで、俺たちは只々遠巻きに様子を伺うだけだった。


 マリーが元の位置まで戻ってきて伏せた。

 後に続いてちょこちょこ歩いてきたマグマが俺の足元に座り、こちらを見上げている。

「怒られたか」

「ピギャ」

「お前はすぐ調子に乗るからな」

 頭についた枯葉を落とし、煤を拭い、ついでに撫でてやる。

「前みたいに俺と二人で気ままに暮らすんじゃないんだ。色んな人に会うし、助けてもらわなきゃ進めない。わかるか」

「ピギャ」

「俺の理想はあのマリーさんだ。なれるか?」

「……」

 どんな説教をくらったのか分からないが、マリーが優秀なドラゴンだということはマグマも理解したようだな。即答しないところに期待が持てる。

「まぁ、努力してくれればいい。俺もお前が従いたくなるような飼い主を目指すから」

「ピギャ!」

「よし、じゃあ朝食の続きだ。お前も暴れて腹減ったろ?」

「ギャウっ」

 マグマを連れて食事に戻ろうとしたところに、シェマが慌てて道を遮った。

「ちょ、ちょっと待ってルイス。ドラゴンに食事させようとしてる?」

「? そうだけど…あ、マリーの分が足りなくなるか。じゃあ俺、獲って来るよ」

「そうじゃなくて! ドラゴンって食事しないものなのよ!」

「……は?」

「ピ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ