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食糧確保

「二人は魔力を持っているのか?」

「んー、まあ弓使いにしては人並みくらい? 魔法甕1個だし」

「私もよ。攻撃に効果付けるときは回復薬が必須な感じね」

「魔法使いの資格を取ったら甕は増えるんだろう?」

「まぁなー。でもそっち増やしたら置き場が減るだろ?」

「置き場って甕の棚のこと?」

「そうよ。まずはメインの職種を極めるのが基本だからそこまでに揃う8個と、初めから持ってる2個とを併せるとあるの程度バランスが取れるのよね。あと2のスペースで何を伸ばすか。悩みどころなのよね。」

「甕の置ける数って決まってるんだ?」

「置けるのは最大で12個までだから、どの職種の甕を配置するかの組み合わせで戦闘に能力差が出たりするの」

 シェマが落ちていた枝で土に画を描き始める。上下2段のラックのようなものに、甕の形を6個ずつ入れていく。

「たとえば私の場合は騎士だから、生命力2個、技能2個、精神3個、SSの特技1個で8個。最初から持ってる生命力と魔力を合わせて全部で10個。戦士のBランクまでは資格を取ってるから、ここに生命力と技能を1個ずつ加えているの」

 棚が甕でびっちりと埋まった。

「甕って魔力を溜めるのだけじゃないんだな」

「もともと持ってるのが2つ。1つは魔力で1つは生命力…要するに体力ね。これ以上は職種のランクを上げて増やしていくのだけど…もしかしてあなた置き場の見方はまだ?」

「甕はまだ見たことないか?」

「ある…けど1個だし、中しか見えないから外がどうなってるか……」

「なか?」

「そと?」

 三人で首を傾げる。

「まぁその辺はメルシア様と合流してからで良いだろ。つーか捌くの上手いな」

 俺は会話をしながら息絶えた魔物の処理をしていた。

 開けてみると血も内蔵も何も出てこない。皮を剥ぎ、部位毎に肉を分けるだけだ。

 刃を入れた時の感触は本当に俺の知っているただの兎なのに。

「ちなみに、魔石は本体が死ぬと消えるから間違って食っちまうってことはないぜ」

 ジェイマーが仕留めた方の兎も処理する。額の魔石は壊してしまったので、力尽きて消えるところはまだ見れていない。

「今日はコレが食事だろ? もう少し獲ろうか」

 ただでさえ小ぶりな兎は皮を剥ぐと食べられる部分はだいぶ小さく感じる。これでは3人分は厳しそうだ。

「この辺にもう一種類良い練習台がいるはずだから今度はそっちをいこうか」

「わかった」

 

少し歩いて辿り着いたのは緩やかに流れる川だった。

「この世界は魚も魔物なんだな」

 『動物枠』はすべて『魔物』なんだよな。であれば魔力を持っているこの世界の『人間』も全て『魔人』と言っても良さそうだ。…印象は良くないが。

「このレベルの魔物は退魔案件として扱うこともないし、食材として認識されているものね。気持ちは分かるわ」

「昔もよく釣って食べていたけど魔石なんか見たこと無かったな」

「魔石、小っちゃいんだ。しかも陸に上がると体力消費が激しいから食うまでには無くなってるのが普通さ」

 ジェイマーから細長い紐を受け取り、一方を矢に結び、もう一端は自分の左手首に何周か回した。上手く飛ぶだろうか。

 澄んだ水の中にいくつもの影が見える。兎よりも大きいかもしれない。魔石は見えないから、とにかく当てることに集中しよう。

 今回はジェイマーのお手本は無しだ。二人は俺の後ろで静かに見ている。

 俺は一番近くを泳いでいた一匹を目で追いかける。

 

 魚の影をよく観察し、動きを読む。泳ぐスピード、止まって動き出すときの間…。

 頭の方を狙い、方向転換した瞬間に水の抵抗に負けないように強い矢を放った。

 入水の音とほぼ同時のタイミングで魚が暴れだす。

 刺さった!

 矢につながった紐が川に引き込まれていく。

 スルスルと残りが少なくなっていく紐をこちらに戻そうと左腕を体に寄せる。

 が。


「うわっ!」

 思いのほか相手の力が強くて前につんのめる。弓も持っているせいでバランスを崩した身体を瞬時に立て直せず、河原の小石に向かって顔から転びそうになる。

 その時、後ろから腹に腕が回され俺の身体は前に折れ曲がったまま地面から浮いた。ジェイマーだ。

「大丈夫だ。放すなよ」

「弓をこっちへ」

 シェマが隣に来て、俺から弓を受け取ってまた少し離れた。ジェイマーはゆっくり俺を降ろし、ズボンの後ろを握って支えてくれた。

 俺は抵抗されつつも少しずつ紐を手繰り寄せる。徐々に向こうの力が落ちていくのを感じた。

 なんとか浅瀬まで引っ張って体全部で魚を抑えたものの、重くてまったく持ち上げられない。結局はビシャビシャと抵抗する魚に水しぶきを浴びせられてずぶ濡れになった俺ごとジェイマーが引き揚げてくれた。

「よっし、上出来」

「ごめん、一人で出来なかった」

「体格の不利はしょーがねーって。それよか初心者の一発命中はスゲーよ」

「今日はもう戻って火を焚きましょう。服を乾かさなくちゃ」

「だな」


 俺たちはそのままドラゴンが待つ場所まで戻った。

 到着した頃には、空に星が見えていた。

 帰り道に集めた枝木を積むと、ドラゴンの一吹きで点火する。

 ずぶ濡れになった服は大人たちに剥がされ、何枚かの布で拭われ、着替えさせられた。

 丸焼きにした魚は身が厚くて食べ応えがあり、兎は食べなれた味のはずなのにいつもより美味く感じた。


 身体が温まり、腹も満たされ、一気に眠気が襲ってくる。

「初日だし疲れたでしょう? もう寝たほうが良いわ」

 目が半分も開かなくなったところでシェマが気づいて声をかけてくれた。

 でももう眠くて返事も出来ない。動けもしない。

「喋ってないとちゃんと子供なんだよな」

「…そうね」

 そんな会話を聞きながら、今日何度目かのジェイマーの腕に抱えられてテントの中へ運ばれた。

 


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