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大地と祝福

 怒ったハリネズミの背中のような無数の鋭い突起が地面から沸き上がり足元を襲う。セシルが上空へ逃れた。

「【土球】!」

 土の槍は形を変え、一つの大きな球状になってセシルの顔を目掛けて地面から飛び上がる。

「セシル!」

 セシルの火炎が球体を砕く。

 砕けた土は空中で散って止まり、視界を濁らせる。

「【撒土】!!」

 土埃が意志を持ったようにうねり、アデギウスとセシルにぶつかっていく。

「凄いね、魔法書一冊でここまで出来るとは」

 ロディが感心の言葉を漏らした。

 それを皮切りに、ライザについて発言が飛び交う。

「土操作の魔法書だけであんなにバリエーションがあるのね。応用力に長けているんだわ」

「魔法に技名付けてるのって最近あんまり聞かないよなー?」

「あれねー、イメージが形になりやすくて良いらしいんだけど他人に聞かれるのが恥ずかしいのよねー」

「僕は昔つけてたよ。『うるさいからやめろ』ってその時の仲間から言われてからはやらなくなったけど」

「アデギウスは防戦一方か」

「え」

「ん? なんだい?」

 ディノーが芝生に弁当を広げ始めていた。

「いや……いま食べるのかなって…………」

「じっと見てるのも疲れちゃうだろ?」

 それはそうかもしれないが、目の前が土埃なのは気にならないんだろうか……。

「とは言っても準備出来てるのはパンだけなんだ。さっきアデギウスから貰ったこれを挟もうかと思って」

 ディノーがアイテム倉庫から取り出したのは首から下の怪鳥だった。

「良いですね、焼きましょう」

 ロディが受け取り、立ち上がる。

「ルイーズさん、美味しい食事の為に力を貸してもらえますか?」

「うん!」

「俺もー!」

「ボクもお手伝いします」

 草むらに潜む虫を探して遊んでいた魔物達がロディのもとへ集まっていく。

「せっかくだから他の食材も焼こうか」

「あ、あたし昨日チット山から山菜採ってきたんだけど」

「三角兎もあるが」

「俺が射抜いた縞熊もいっとく?」

 と、どんどん食材が出てくる。

 完全に全員キャンプの気分だな。

「わーいごちそう!!」

 喜ぶルイーズを見て思い出した。

「そうだ、フィリーアに鎖を作ってもらうのを頼み忘れてた!」

「えー! まだ食べられないの?!」

 ルイーズがドスドスと地面を踏み鳴らす。

「魔力を貯める鎖の事? だったらセシルの暴走の時にも使ったやつが……」

 フィリーアはカバンに手を突っ込み、そのまま中をグルグルかき回す。

「ほら、使ったばっかりだから上の方にあったよ」

 じゃら、と差し出された鎖を受け取って左右に引っ張る。

「これ確かセシルの首でも長さが足りなかったんだよな……」

 それより大きなルイーズだ。

 首周りにあてがってみるが、絶対に短い。

 つけるなら手首か足首か……。

「人型に戻った時ってすっぽ抜けちゃうかな?」

「それはそうね…加工して伸縮性を持たせてみましょうか」

「出来る?」

 鎖をフィリーアへ戻す。

「一から作るのとは違うからすぐ出来ると思うわ。ついでにマグマがもっと大きくなっても大丈夫なようにそっちにも手を入れましょうね」

「一通りの工具は持っているよ、使うかい?」

「あ、ありがとうございます! じゃあちょっとやってくるわね」

 フィリーアとディノーが少し移動して簡易加工場を設置し始めた。

「わ、キッツいなあの壁」

「あれでは上に出るしかないか?」

 少し目を離しているうちに、戦場には高い塔…煙突? のようなものがそびえ立っていた。

「なにあれ? アデギウス達はあの中?」

「四方から壁が一気に迫ってきて閉じ込められた。あのてっぺんはまだ開いてると思うんだけど」

 壁の幅は狭く、おそらくあの中ではセシルは翼を広げられずに身動きすら困難だろう。

 ライザが手に持っていた本を投げ捨て、新しい本に持ち替える。

 再び土の槍が大量に作られて、今度は空中に浮かぶ。

「【土投槍】!!」

 ライザの目線と同じ高さの槍が一本、高速で飛んでいく。

 そして塔の壁を貫通した。

 内側から ガリガリガリ! と壁を引っかく音が上っていき、その音を追い立てるように残りの槍も次々と高度を上げて壁に突き刺さっていく。

 塔の上部まで追い詰めたところでセシルの壁を登るスピードを捉えたライザが残りの槍を一気に飛ばした。ちょうどセシルが塔の先から頭を出す瞬間を目掛けて。

 ……が、それらは一本も命中せずに塔の上を通り過ぎ、遠くで落下した。

 ライザが再び槍を作る。

 アデギウスが外へ出るならこのタイミングだった筈だ。

「出て来ないつもりか?」

「もう遅い。次に来れば刺さるぞ」

 今度は30本を超える槍が塔の先に向かって一度に放たれる。

 もう逃げ場はない。

 ガラガラガラガラッ………

 多くの槍に貫かれた土の壁が崩れ落ちる。

「?!」

 しかしその中に銀の竜の姿はいなかった。

「お? 上手いことすり抜けて下にいるのか?」

 すぐさまもう一度槍を作る。

 そして今度は塔の真上から内部に向けて落としていく。

 だが、少し低くなった塔に土の槍は一本たりとも入り込むことが出来ずに何かに弾かれて外へ落ちる。

「えー、バリアー?」

「っ」

 苛立ったライザが術を解いたのか、土壁が剥がれていく。

 どんどん高さを失っていく壁。しかし一向にセシルの姿は見えず……やっと何か見えたと思ったその時、飛び出してきたのは鋭い刃のついたブーメランだった。

「!!」

 地面に落ちていた土槍が飛び上がってブーメランへ当たり、僅かに狙いを外す。

「あれ? 結局セシルは?」

「あれだ、腕の」

「ああ!」

 腕の班球体の中にセシルが見えた。

 塔の残骸を踏み越え、アデギウスがライザに向かって突進する。

 両手には今空中で折り返そうとしているのとは別のブーメランが2本。

 それを一気に空へ投げる。

 軌道を見ると戻りの刃がライザの背後を襲いそうだ。

 しかしアデギウス本人が正面から向かってくるのでライザはそちらに注意を割けない。

「【土波】、【噴土】!!」

 ライザが立て続けに魔法を発動させる。

 アデギウスの足元の土が波打ち、もう少しの所でガクンとスピードが落ちる。

 自分の背後には土の塊を噴出させて頭上までの壁を作った。

「…いけ!」

「!!」

 班球体からセシルが出現する。

 超近距離での出現にライザは対応しきれず、セシルの牙が彼女の腕に食い込んだ。

 手から本が落ちる。

「ッ……」

 しかし噛みつかれるのと同時に無事な方の手には別の本が現れていた。

 セシルの鼻先にその本を当て、叫ぶ。

「【祝福者】!」

「おー!」

 ササがその魔法に食いついた。

「なに?」

「敵から受けるダメージが全部体力と魔力の回復に変換されるのよー。タイミングばっちりだったわー」

「もう無敵か?」

「そこまで都合は良く無いよー。発動時間は長くて10秒ー」

 ライザの背中を刃が襲う。しかし切れた瞬間に傷口はふさがり、切れたローブも元に戻る。

「魔力を補充できたのは大きいわねー」

「セシル放すんだ!」

 アデギウスが一旦距離をとり、セシルもライザの腕から牙を抜いた。

「こりゃ振出しに戻ったか? アデギウスが勝つには?」

「魔法使いの弱点は沢山あるよね。魔力や魔法書の枯渇、魔法書の持ち替えの時の隙、体力の無さ、あとは………」

 カラビウがチラ、と横目でササを見る。

 ササがそれを敏感に察知して睨み返した。

「なによ。言ってみなさいよ」

 なぜかもうかなり怒っている。カラビウが何を言うのか分かっているみたいだ。

「……短気」

「何それあたしのことー?!」

「い、いえ…世間一般そうだよな~という話を………」

「じゃあ誰の事よ? ほら言ってみー?!」

 そこは弱点ではなく逆鱗みたいだな、カラビウ。

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