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探知盤

「発想が飛びすぎてるかもしれない…けど、もし思い詰めてしまってたら……」

 人は、その場のその瞬間の感情でいくらでも間違った選択をしてしまうものだから。

「……急ごう」

「はい」

 オザダの合図でガララが俺たちの横をすり抜けて行った。

「ルイス?」

「……ああ、俺たちも行こう」

 マグマに乗り込み、次の場所を指示する。

 空へ上がる。

「…………?」

 上昇しているときに、少しだけ何かに違和感を覚えた。

 けど振り返って町並みを見下ろしても、どこが気になったのかわからなかった。


「ロディ!」

「ママ!」

 上空でルイーズを乗りこなすロディを見かけ、追いかけた。

「やあルイス」

「主! ルイーズ頑張ってるよ!」

 はしゃぐルイーズが体を揺らしてもロディは涼しい顔で乗りこなしていた。

 もしかしたら騎士のSSランクとかも持ってるのかもしれないな。

「村の外に行ってたの?」

 彼らは村の外から戻ってきた様だったので聞いてみる。

「近くの詰所を周って少し聞き込みしてたんだけどね」

「詰所………ああ、山に結界を張ってる人たちの」

「ちょっと大変なことになるかもしれない」

「え?」

「一棟消えた」

「…………え?」


 そのとき、背後で パン! と軽い音が響いた。


 振り返ると、俺たちと同じくらいの高さに黄色の小さな落下傘が揺れながらゆっくり落ちていくところだった。

「ジェイマーが何か見つけたんだ。マグマ、行くぞ!」

「おう!」

 俺たちは急いでその場所へ向かう。

 落下傘が落ちた場所は、何もない空き地のようだった。

「……ここ? それともこの周辺か?」

 見渡しても特に何も無さそうだけど……。

「ジェイマーならピンポイントで知らせてくる筈だが……」

 ロディも辺りを確認してくれているが、何も無さそうだ。


 パン!


 さっき聞いたのと同じ音がしてその場の全員が空を見上げる。

「今度はあっち?」

 赤い落下傘が開いたのはここからかなり離れた場所のようだった。

「行こう」

 再び上空へと戻り、落下傘の位置を目指す。

 が、

 その途中でまた別の所で今度は青い落下傘が打ち上げられる。

「どうなっているんだ? 逃げられている?」

「わかんないけど……二手に分かれよう!」

「ああ」

 俺とマグマは赤い落下傘の確認に急ぐことにした。


「ここも何にもない……」

 またただの空き地から赤い落下傘を回収する。

「誰もいないな」

「……」

 パン、と緑色の落下傘がかなり遠くで開いた。

 またか。

 ………。

「………ここは…空き地?」

 俺は町の地図を見返した。

 今立っているこの場所は空き地。

 さっきの黄色い落下傘の場所も空き地。

 ロディが向かった方角にも、いま緑の落下傘が上がった方にも空き地がある。

 そして、俺が違和感を感じた時。

 空き地の印を付けていた場所は、空き地じゃなかった……。


「ジェイマー!」

「お、お前らも来たか」

 入山申請所の屋根の上にジェイマーとロディたちがいた。

「あんまり騒ぐなよ、ここを使う許可は取ってないんだ」

「ライザさんの家族の人には?」

「さりげなく聞いてみたけど、昨日出掛けてからは戻ってないみたいだな。もともと今日が休みだから気にしてなかったっぽい。それよりあの場所、よく見てろよ」

 そう言われる前から緑の落下傘が降下していく場所はずっと見ている。

 空き地だと教えてもらったその広い土地には、小さな小屋の屋根が見えているのだ。

「オザダがアレに向かってる」

 細い道を通ってガララがゆっくり目的の場所へ近づいていく。

 小屋はその細い道から一度大通りに出て渡った更に向こう側だ。しかも手前に建っている家は大きくて、奥まった位置にある小屋からはきっと道の様子は見えないだろう。

「…よし、そのまま近づいて…」

 そう口に出した瞬間、

「あ」

 小屋が光に包まれて消えた。

「……さっきからこんな調子なんだよ。どうやって接近を感知してるんだろうなアレ」

 オザダ達と小屋との間にはまだかなりの距離があった。見ていたわけじゃないんだろう。

「魔法?」

「探知魔法かもしれない。でもどういう類だろう。魔物探知や仲間探知は知っているけれど繋がりのない俺達の接近がわかるというのは…」

「仲間探知だ。レリアリが魔物の声を聞こえるようにしたとき、ライザさんも聞こえるようになった。それって仲間ってことだよな」

「それは………ああ、君か。なるほど」

「なに?」

「退魔師のバッジには【編成記憶】という力が付いている。一定時間行動を共にしていると他の退魔師のバッジと交信して、情報を共有し合うんだよ」

「それって………?」

「本来は仲間同士が別行動やトラブルで離れたときのためで、仲間探知のアイテムや魔法で位置の特定が可能なんだ」

「ライザさんはそれを利用して逃げ回ってるってこと?」

「だったらあの反応の速さも頷けるわ。つーか、どうする? 今度の転送先、村の中じゃないかもしれないぜ」

 確かに、広く村全体を見ていても光も小屋も一向に現れない。

「こちらも探知を使うしかないだろう。フィリーアならアイテムを持っているはずだ。ジェイマーは引き続きここで見ていてくれ」

「了解」


 ディノーの家に戻った俺たちに気づき、フィリーアとキンが庭から工場前まで出てきた。

「フィリーア、仲間探知のアイテムが欲しいんだが持っているかい?」

「ええ、方位盤型のがあるわよ」

 フィリーアがアイテム倉庫から取り出した円盤のようなものをロディに手渡す。

 真っ黒い皿……大きさや薄さからレコードを思い出す。

「ルイス、君のバッジをこの中心へ」

「え? …ああ、うん」

 俺は勇者のバッジを円盤の中心のちょっと窪んだところにはめ込んだ。

 すると、バッジの裏の辺りから小さな光がいくつも現れ、その光たちは盤の中を散らばっていく。

 中心には白い光が二つ。

「自分は真ん中のバッジの位置。周りにあるこの光が俺とフィリーアだ」

 他には少し離れた位置に止まっている光が一つ…ジェイマーだな。

 細かく曲がりながら一定の速度でジェイマーのいる所に向かっているのは、たぶんオザダだ。

「大きく移動をしているこの二つがアデギウスとササだろう」

 グネグネと飛び回っていて、どこを探せばいいのか完全に迷っている動きだ。

「カラビウはまだバッジが手元に戻ってきていない」

「ということは、この遠い場所で止まっているのがライザさんなのね?」

 俺たちは方位盤の端っこに止まっている光の方向の延長線上へ視線を上げていく。

「……」

「もしかして……え? でも確か………」

「あ!」

 フィリーアが山の上の方を見て叫んだ。

「ねえ、結界見える?! 私、見えないんだけど?!」

「も……」

 もともと見えないものの話をされても…と言いかけ、ロディの表情が険しくなったのが見えたので慌てて口の形を変える。

「…しかして、かなりまずい展開?」

「かなり、ね。うん、かなりだよ。急ごう」

「私も行った方が良い?!」

「いや、ササにやらせるからフィリーアはここにいてくれ。突然何人も動きが変わったら警戒される」

「わかったわ。念のため準備しておく!」

 ロディがアデギウスとササのいる方角へルイーズを急がせ、俺はその後ろをついていく。

「どうしたー?!」

 下から叫ぶ声が聞こえた。

 ちょうど申請所の上だった。

「ルイスはまず二人に説明を!」

 俺はロディを追うのを止めて申請所の屋根にマグマを下ろした。

「なんであんなに急いでた? 何があったんだ?」

「俺たちも向かうべきか?」

 屋根の上にオザダも一緒にいた。ガララは下で待機中のようだ。

「ライザさんが見つかって…なぜか山の中みたいなんだけど、えっと、結界が無いとか……?」

「!! そういうことか! うわ、ホントだ! 村の方ばっかり気にしてて気づかなかったわ~!!」

 体の向きを変えて山を見上げたジェイマーが叫びながら頭を抱えた。

「ササにやらせるって。フィリーアには動きが変わったら警戒されるからって言ってた」

「…そうだな、下手に動いてまた移動されると厄介だ」

「………わかった。なんか出て来たら俺らで処理するから」

「ルイスはロディの方へ行ってやってくれ。マグマの力が必要になるかもしれない」

 慌ただしくオザダが屋根から下りて行く。

 その音に気づいたのか、中から人が出てきた。

 中年の男性のようだ。ライザの父親だろうか。

 やり取りは聞こえないが、オザダが山を指さすと男性は家の中へ叫びながら戻って行った。

「さぁ、お前等も急げ」

「ああ!」

 攻撃用の矢に持ち替えたジェイマーに見送られ再び空へ。

 遠くに小さく見える赤いドラゴンを追う。

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