表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/296

会いたかった

「…………っと!!」

 意識が戻るのとほぼ同時に俺の体が下から突き上げられた。

 俺の真下にルイーズが出現したのだ。

「なっ、なにごと?!」

 後ろからカラビウの慌てた声が聞こえた。

「こいつは大丈夫だから! それよりナイトメアがっ……」

 高い位置から周りを確認する……が、黒馬の姿が見えない。

 ルイーズの大きな体のかげに隠れているのか?

 俺はズルズルとルイーズの体を滑り降りながら叫ぶ。

「ナイトメアは?! 出てきただろ?!」

「……これのことかねぇ?」

「え?」

 藁に足が付いたところで俺はメルシアの声がした方を向く。

「…え?」

 そこにはメルシアを間近で睨みつける、見たことのない女性が立っていた。


「あんたちょっと見なさいよほら! この私の美脚に何てことしてくれたわけ?!」

 詰め寄る女性の艶のある浅黒い肌の右腿の一部に、擦り剝いた跡のようなピンク色の肌が丸く見えた。

「えっと………【女王】…?」

 声が同じだけど見た目に馬感が全くない。

「主さま! 見てよコレ、馬の姿の時よりも目立つの。最悪だわ」

「人間になれるのか」

「まぁね、最上位種だから。それよりもこの肌よ!」

 肌より変化の方が大事だろうが。

「お前、本当にさっきのナイトメアか?」

 メルシアが【女王】を睨み返している……。

「そうだって言ってるでしょ」

 いや、言ってはいないよ。

「だがあたしは術に掛かっていないようだ」

「人間になってるうちは他のスキルが使えないのよ。でも勘違いはしないで。あんた達が一瞬でも変な動きをしたらすぐに姿を変えて私の術の中に閉じ込めるわよ」

「ほう? どんな感じなんだろうねぇ?」

「あの…出来ればやめてもらえるかな……」

 そろっと二人の間に割って入ってみたものの、俺の身長で下から見上げるとどちらも関わりたくないくらい凄みがあってそのまま戻りたくなる。

「……主さまの身内だったことに感謝しなさい」

「ふん」

 双方が一歩ずつ下がったことで一安心…か?

「マグマー!!!」

 胸を撫でおろす暇もなく今度はルイーズが叫ぶ。

 突然現れた同じ色のドラゴンに名前を呼ばれたマグマはその場から動けずにいた。

「えっ、えっ?」

 大きなルイーズは数歩歩み寄るだけでマグマのもとにたどり着く。

「マグマー、ルイーズだよー! 会いたかったよー!!」

「え? だれだれっ?」

「えーっ、忘れたのぉ?! この親不孝者めーっ!」

 頭を振り下ろし、マグマの頭に顎がヒットする。

「グゥェ!」

 威力に耐え切れず、マグマが地面に打ち付けられた。

「【ルイーズママ】でしょ! 言ってごらん! ほら!」

「…ルイーズ…ママ……??」

「そう! いい子ねマグマ!」

「うおっぷ!」

 ルイーズがマグマに顔をこすりつけながら尻尾を振りまわす。

 敷いている大量の藁が空中を舞い、特に後方にいたカラビウが被害を受けた。

「ルイーズ落ち着いて! くっそ、コイツこんなにデカかったか?!」

 ベチベチ叩いてみるが微動だにしない。

「すごいね、こんなに元気なルイスが見られるなんて……」

「ルイーズ、な!」

「おっとすまない。そうそう、ルイーズちゃん、だね」

 ロロックの間違いは興奮状態で聞き流してくれたようだが、ここで火を吹かれたらたまったもんじゃない。

「俺の…ママなのか?」

「そうよー! ママよー!」

「…ママ。……ママーっ!!」

「マグマーっ!!」

「…………うるせぇー…」

 おっと、ついつい口からこぼれてしまった。

 しかしこの親子がいつも一緒だと騒がしくて苦情が上がりそうだ。

 特にルイーズは体がデカい分マグマよりも声がデカい。

 参ったな。どうしたもんか……。

 俺は問題から目を逸らしたくて赤い奴らを視界から外した。

「……【女王】、その姿で付いてくる気か?」

「そうよ。これならナイトメアだって気付かれないでしょ? 主さまに迷惑かけないでしょ?」

 クルクルっと回って全身を見せる。

 布面積が少ないのは自慢の肌を見せたいんだろうな。

「…まぁ……でもなぁ……いつでも元に戻れるってのは安心できないし……それにスキルが使えないなら付いてきても役に立たないじゃん」

「だ・い・じょ・う・ぶ!」

 突然【女王】の人差し指が俺の額をめがけてのびてきた……と思ったがここまで届かない。

 何のつもりかと抗議しようと思ったその時、その指に嵌められていた指輪から魔法書が出現した。

 落ちる前に素早く掴んだその本の上に【女王】が発動させたのは……小さな虹だった。

「人間の姿の時は人間の魔法書が使えるわ。好みとしては天候系ね」

「…その本はどこから」

「人間達から色々貰ったの」

 言葉のあたまに『襲った』が付くんだろうな。

「あとは…ナイトメアの姿に戻らないか不安なのだっけ? そうね……だったら装備アイテムを作って制御したら良いんじゃない? 人間はそういうのを作るのが好きでしょ?」

「作れるのか」

「あの女の子にやらせれば大丈夫じゃない? 私が仕組みを教えるわよ」

 フィリーアのことか……頼めばやってくれるだろうけど…。

「もう付いていくと決めたのだから悩んでも無駄よ、主さま。」

 …ずっと思ってたんだけど、ここまでの会話のやり取りの一体どの辺に『主感』があるんだろうか。

「だから、ええと…マグマ、カラビウ、それからライザも暫く一緒かしら? よろしく頼むわね。……それと、うるさいぞロッジャル!」

 カラビウの胸元でロッジャルが暴れていた。暴れすぎていて目が合わないので何を言ってるかがわからない。

「あいつは何で暴れてるんだ?」

「ん? そっか、視線を合わせないと聞こえないようにしていたわね。どうせだから仲間の魔物とは会話が出来るようにしちゃいましょうか」

 そう言って【女王】は開いた両方の手のひらを頭上に掲げた。

「10秒だけ戻るから私の目は見ないでね!…10! 9!…」

 自分でカウントを取りながら【女王】が煙のような黒い靄を纏う。その靄が薄まると尻尾や鼻先が見え出した。

「5! 4!」

 今度は【女王】の前に小さな白い靄が幾つも現れる。そしてそのうちの一つが俺の体にぶつかって消えた。

「うっひゃーマジか!」

「えっ、なに?」

「おお?」

 ライザとカラビウから声が上がる。同じように靄に襲われたのだろう。

「うぇーい! レリアリ様サイコー!」

 そして、残りの靄は【女王】の前から揃って消えた。

「2、…1…、はい完了~」

【女王】は宣言時間内にしっかり再び人間の姿に戻った。

「なぁなぁみんな聞こえてるぅ?」

「……おい、要らなくないか」

「俺ロッジャル! ヨロシクゥ!」

「そう? これでみんなもマグマやガララと普通に会話できるのよ?」

 ……それはありがたいが。

「せめてコイツを仲間から除外してくれ」

「ちょ、兄ちゃんそりゃないぜ!」

「私は『うるさい』と言ったぞロッジャル!」

「ヒッ」

 ピシャリと言い放った【女王】にロッジャルが怯んだ。

「しかも主さまに向かって『兄ちゃん』などと軽口を…。私に恥をかかせないで!」

「ご、ごめんなさい……」

 小さなロッジャルの尻尾と耳が垂れて更に小さく見える。

「生き続けたいならお前も主さまの為にそこで働きなさい。今度主さまへ不快を感じさせた瞬間に消すわよ」

「やっ、やります大丈夫です働きますっ! お許し下さい主さまっ!!」

 ……なんか一気に俺が悪者になった気分なんだが…正直言えばこれも不快にカウントしたいところだ。

「じゃあ取敢えず胡散臭いお前達に『主さま』って呼ばれるのは何か嫌だから名前で呼んでな?」

「達……とは、もしかして私も?」

「そうに決まってるだろ。あと、さっきアイツが『レリアリ様』って呼んでたよな。お前の名前か?」

「そうよ。『レリー』って呼んでくれて良いわ」

「うん、レリアリな。覚えた」

「もう!」

「おい、あたしに術がかからなかったようだが」

「俺もだよ」

 メルシアとロロックがレリアリに近づいた。

「あなたたちは引退してるんだからもう主……ルイスさまの仲間ではないでしょ。図々しいわね」

「引退しても家族なんだから仲間みたいなもんだ。ケチケチするなよ」

「家族も入れるならあんたの娘も婿も入るけど良いのかしら?」

「ああもちろ…」

「ぃやあーそれはちょっと困るかなー!」

 ずい、と更に詰め寄ろうとしたメルシアの腹を俺は目いっぱい押し返す。

「まあいいじゃないか。俺たちは意思疎通したい何かを飼ってるわけでもないんだし。……ただ」

 ロロックが徐にルイーズを見つめた。

「あの子とは話をしてみたかったな…」

 …………。

「ルイーズ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ