【裏話・参考資料】吟遊詩人の詞作ネタ
『生贄の騎士と奪胎の巫女』より
「もしもし? ええ、はい。今回も情報ありがとうございました。はい。取締りには気を付けます。
え? ……神的NGが入るかも?? 勘弁してくださいよ〜。俺まだ消滅したくないですよ。
ええ? ダメ元? いやいやいや、他人事だと思って……。分かりました。目は通します。はい……はい……は〜い、失礼します。」
通信を切って、売れっ子吟遊詩人は独りごちた。
「……マジかよ、厄介な依頼出しやがって。毎回いいネタをリークしてくれる客じゃなきゃ、触りたくもない案件だぜ。」
そう言いながらもバードは資料を捲る。
【勇者譚 関係情報】
猿田彦大神……太陽神、道祖神
猿女君……猿田彦の妻、踊りが得意
青面金剛……庚申信仰の夜叉神
大田命……猿田彦の子孫
倭姫命……皇族、斎宮
稚日女尊……機織りをする神
ハヌマーン……太陽を取ろうとした神の子
サムパーティ……太陽に近づき過ぎた鳥の王
イカロス……太陽に近づき過ぎた男
羿……太陽の化身を射落とした元神
夸父……太陽を追い詰め干上がった巨人
グシオン……悪魔で地獄の大公爵
クリストフォロス……渡し守の聖人
クヌム……川を司る緑の羊の頭をした神
バステト……太陽神ラーの娘
キニチ・アハウ……ジャガーに変身する太陽神
野紺菊……学名:アスター microcephalus var.ovatus 「質素、守護」 青紫
花蘇芳……学名:サーシス chinensis 「高貴、質素、不信仰」赤紫
京鹿子……学名:フィリペンデュラ purpurea 「質素な美、密かな恋、努力」 赤紫
紫苑……キク科の多年草。「追憶」 紫
竜胆……リンドウ科の多年生草。「あなたの悲しみに寄りそう」 青紫
除虫菊……学名:タナセタム cinerariifolium ピレトリン含有 シノニム:Pyrethrum cinerariifolium 「忍ぶ恋」白
菊……学名:デンドランセマ・グランディフローラム キク属はクリサンセマム 「高貴」
ベリス・ペレンニス……英名:Daisyは Day’s eye が訛った。 「平和」 白
アルテミシア・プリンセプス……ヨモギ。キク科。「幸福」 赤紫?
ミヤマヨメナ……学名:Aster サバティエリ Makino 「別れ、別離」 紫
「えっ……。え? 勇者どれ? ……さるたって火の鳥? おっさん勇者じゃないよな。
下の方は花言葉だし……。ああ、なんだ。二枚目にもう作詩してあるじゃないですか〜。おお。
……お? 二枚目は先行演奏禁止?? 凱旋に合わせて流行らせるべし……」
早速曲を付けようとしていたバードは、弦楽器を取り損なった。
「この訳分からん情報でまずは一曲作れという事か? ……マジかよ。よく見たら紫と太陽と神が多くない? 神的NGってそういうこと?? …………よし、諦めよう。」
バードは一枚目を放り投げ、二枚目を眺める。
「勇者に姫に賢者に神官ね。いいね〜ベタ。一枚目と二枚目の繋がりが分からんけど。
……あ、裏にメモ付いてる。……3×12? 九九か。……わらべ唄だな。あ〜、この猿の兄さんがさるたなのか?」
楽器を掻き鳴らしながらバードは鼻歌を響かせる。
「目の前に完成した詞があったら、そりゃ、曲を作っちゃうでしょ〜。あ、でも通信電波があるうちに検索だけしとくかな。まず〈紫 太陽〉で検索……」
『エキノケレウス リギディッシムス Echinocereus rigidissimus 紫太陽 サボテンです。』
「俺が知ってるサボテンはこれじゃないな〜。〈エキノケレウス〉で検索。」
『サボテン科のエキノケレウス属は北アメリカのサボテンです。』
「……〈リギディッシムス〉で検索。」
『rigidusは硬直した、直立した。simusはしし鼻の、潰れた、広げたです。』
「硬い直立鼻のサボテン……。あれを鼻にしたら……天狗??〈神 天狗〉で検索。」
『検索結果多数。選択してください。』
「どれどれ……神としての天狗。ふむふむ。……天狗と猿田彦。……最初に戻った。」
バードは資料の一枚目はすっきり諦めて、いつ誰がするのか分からない勇者凱旋に向けて、作られた詩を曲に乗せ、自分だけの詞にアレンジしていくのだった。