義兄 フリード
お義兄様登場します。
中庭庭園での一件から半年が過ぎ、エリザベートとは良好な関係を築けていた。
今ではお互いに愛称で呼び合うほどである。
「勉強なんて退屈でしかないわね!ロイ」
「まあまあエリザ...でもこれから先必要な事だからキチンとやらないと....そうだ、終わったらまたカンナの花の所に行こうよ」
「それは良いわね!!だったら早く退屈な勉強を終わらせましょう!!」
エリザベートからはロイ、俺からはエリザと呼び合うこの仲睦まじさ!!初対面の時とは大違いだなぁ....ホント最初はどうなる事かと....。
そうそう、それで今日は朝から皇家に仕える家庭教師に勉強を教わっていた、俺は転生者だから少し難易度が高めの内容でエリザベートは5歳児レベルの軽い勉強だ。
それでも勉強ってだけで退屈だと思うのはやっぱり皆同じだしいつも元気に遊びたい快活なエリザベートからしたら当然だろう。
だから、思い出のカンナの花のある庭園で2人でのんびりするのが毎回の定番となっていた。
「あっでも今日はお昼頃にお兄様が帰って来るはずだわ!先にお迎えしてからね!!」
「お兄様?」
誰?半年もここにいて1度も聞いたり、見たことも無いけれど.....あっでも確かに、エリザベートが第2皇女なんだから第1皇女もいるだろうし男の後継者もいるよな。
第1皇女様はもう他国に嫁ぎ済とは聞いているけど、そのお兄様はいったい?
「そう、領地の視察?っていうのから今日帰って来るってお父様が言っていたの!」
領地の視察....って事はもう歳は20歳とかなのかな?
確か死んだエリザベートのお母様が唯一の側室らしいから正妻のフレミア様の子供かな?
ローライグ陛下の正妻フレミア様はこの半年の間に少し話した程度だが、会ってはいる。
まあこれから家族になるんだし、腹違いとはいえ娘の婚約者だからね俺。
見た目は50代位の銀髪で高貴そうな感じの方で、遠目から見ると凄い様になるって言うか王妃って感じがする方だ。
でもプライベートの方では腹違いであるエリザベートにもだが、娘には甘くかなりのダダ甘具合だ。
ローライグ様曰く子離れ出来ない典型らしい。
しかし、かなり有能でローライグ様と2人で執務もするし聞いた話では戦いでも氷を使う魔女としてかなり強かったらしい。
まあでも今のところ俺から見たイメージはただの子供好きの綺麗なおばさんだ。
「お兄様ってフレミア様の子供?初めて会うな....ちょっと緊張するよ」
「大丈夫よ!フリード兄様はすんごく優しいんだから!!」
どうやらフリードって名前で凄く優しいらしい、これ以上は実際に会ってみないと分からないだろう。
「へーだったら早く課題終わらせてフリード様を迎える準備をしなきゃね、エリザ」
「ええ!!」
その後、2時間程勉強をした後2人で使用人達の手伝いに向かった。
使用人達には俺達を働かせる訳にはと言われたが、フリード様を迎えるのに準備から頑張りたいというエリザの願いから簡単な仕事ではあるが手伝わせてもらった。
そして、準備も完了して少ししたらフリード様が到着したとの連絡が入った。
「「「「「「おかえりなさいませフリード殿下」」」」」」
「良い、皆ご苦労」
「お兄様!!」
「おお!エリザ!また背が伸びたんじゃないか?相変わらず我が妹は美しいよ」
「お兄様ったら.....」
この人がフリード様か.....見た目はフレミア様譲りの銀髪に、ローライグ様譲りの男らしい端正な顔立ちそして良く鍛えられているのが分かる体つきに皇家直系の証である翡翠色の瞳をしている。
「初めまして、フリードお義兄様。
私はエリザベート様の婚約者になりましたロイル・フォン・ユグドラシルでございます。
これからよろしくお願いいたします。」
「君が我が妹の婚約者ロイルか.....不適合者....らしいな」
「.........はい、私は転生者で不適合者でございます」
なんだよ、不適合者は嫌いだってか?確かに良い所ではないけど、この国は差別的なのはかなり少ないってローライグ様が言っていたのに。
「そうか、不適合者の君がエリザベートを敵から守れるのかな?婚約者って事はそういう事だよね.....もしエリザベートの身に何かあったら.....命は無いと思いたまえ」
あっ分かった....この人結構なシスコンだ。
「お兄様!ロイル様は良いお方ですわ!あたしは婚約者がロイル様で良かったと思ってますしロイル様以外はお父様ぐらいしか認められませんわ!!」
「..........そうか.....エリザベート?僕は?」
「???お兄様はお兄様ですわ?」
「ははは、そうだね......」
ああ、露骨にダメージを受けていらっしゃる.....愛する妹が婚約者として認めるのは自分の父親とぽっと出の不適合者である俺で、自分はお兄様以外にはなれない事がかなり辛い様子.....これは重症なシスコンですね。
「......どうやったかは分からないが、ロイル君...君はエリザベートからの信頼を得ているようだね。
僕は君を家族として歓迎するよ、不適合転生者の場合スキル使用までの制約は8年だったね?そのあとはエリザベートを守れる努力を君はするんだ絶対にね」
「はい、勿論です!エリザベートは俺が守ります!!」
「信じてるよ、我が義弟君」
そう言ってフリード様は使用人達に連れられてローライグ様とフレミア様の待つ部屋へと歩いて行った。
俺達2人も頑張って準備したって知ったらあのシスコン兄様はエリザに対してどんな反応をするか楽しみだ。
「......エリザベートは俺が守ります.......ふふっ」
ん?なんだかエリザの顔が赤いけどどうしたんだろ?
フリード様に会えて嬉しかったからかな?
まあ良いや。
とりあえずお腹空いたし、エリザを誘って僕らもご飯を食べよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ここはゼーヴィング皇国皇宮王執務室。
しかし、今は文官等おらず完全にローライグとフリード親子二人のみである。
「良く帰って来たなフリード.....では報告を聞こうか」
「はい、父上.....今回視察に向かった東のトリラー伯爵の領地ですがやはりユグドラシル帝国の手が伸びてきていますね」
「そうか、具体的には?」
「まず密偵を数名、そして未然に防ぎましたが市場や小麦等の食料栽培に対しての妨害行為や撹乱等がありました....実行犯は明らかにユグドラシル帝国のものだと言えますが.......」
ゼーヴィング皇国は西側にある3大国の一角で、小麦等の輸出で主な財政を稼いでいる食料大国である。
しかし、地形上3大国の中ではユグドラシル帝国に一番近い位置にあり、世界の覇王を称し世界統一を考えている帝国の策略を一番に受けている国である。
「....証拠が無いと.....」
「はい、ですのでユグドラシル帝国に対しては泣き寝入りですね。
実行犯に対しての処罰だけになりそうです」
「..........」
「.....話は変わりますが、父上はロイル君とエリザベートの婚約についてはユグドラシル帝国にはどのような考えがあると思いますか?」
「....まあロイルを利用しようとしているのは分かっている....フリード、お前はどう考える?」
「僕はこのように考えます、勇者至上主義で不適合者は蔑み対象の国ですからね。
我が皇家に不適合者という能力の高くない者を押し付け弱体化を狙い、ついでに自国の厄介払いと言った所でしょうか....皇帝の息子に不適合者が出たというのは不都合でしょうしね」
フリードは第1皇子として既に政務の最前線に立ち、武闘派な両親を支え、自分自身もかなりの戦闘能力を有している若きゼーヴィング皇国の後継者である。
今回のエリザベートとロイルの婚約に対して反対したい気持ちもあるが、父のロイルを助け救い出したいと言う考えには同調しているし、ロイルと多少話をした所将来有望な少年であると判断した為反対の気持ちを今は殺しているのだ。
「うむ、やはり俺とほぼ同意見だな....しかしな....」
「他にもまだ何かあるのですか?」
「いや、杞憂であってくれればそれが一番なんだが....俺には優秀な勇者達を囲っているあの最凶の国がこの程度の策略で終わる気がしないんだよ...何かロイルを利用してどデカい事をかましてくる気がしてな...」
昔から多数の戦場等戦いの場に出てきた為か、ローライグには政治的駆け引きの場でも光る直感のようなものがある。
その直感が今回の婚約にはまだ何か裏があると訴えているのだ。
「父上の勘は良く当たりますからね....了解しました、この件については今後も調査を続けます。
それに兄としてこのままエリザベートにはロイル君と幸せになって欲しいと思いますし」
「ほぉお前がエリザベートを男に取られて、幸せになって欲しいと思うだと?明日は雨でも降るかもしれんな」
「茶化さないで下さい父上....彼は将来何かやってくれそうな気がするんですよ...戦場等での勘は父上に劣りますが人材を見る目は父上に負けないと自負しておりますので」
フリードは幼少期から聡明であった為自分の直属の部下は手ずから国全土を探し歩き見つけてきた優秀な者達ばかりで構成されているのである。
人の将来や適性を見抜く目を持つフリードは軍の指揮官選別時の面接官にも抜擢されている程だ
「ふむ、お前の目は信用しておるからな....不適合者の制約が外れるのが楽しみだ」
「そう言えば父上、来月のエリザベートの誕生日についてなんですが.....」
「おっその件についてはロイル君とも話してある、一時間後二人のデートが終わったタイミングでフレミアも呼び4人で話し合おうではないか....」
他のページより少し長めでしたが、ちょうど良い感じでしょうか?それとももっと長い方が?短い方が?感想等で教えて頂けると飛び跳ねて喜びます。
何卒よろしくお願いいたします!