不適合者
ちょっと短めです
あのステータス付与の日から1ヶ月が経過した。
あの日から俺と母様、そして母様から俺への扱いは見る影もない程に変わった。
母様はどこか亡国の姫でそれを滅ぼしたのが、親父のミラーリトス....自分を差し出す事で家族と自分、そして血を残そうとしたが俺が不適合者だったために家族は全員処刑されたそうだ。
それからというもの、母様は俺を親の仇のような目で見てくるのだ.....そして、給仕などの帝国の家臣達は俺達家族を見下すような目で見て、俺に対しては不適合者だなんだと陰口を叩きまくっている。
一応皇族なのにである。
良い事はほとんど無いが、強いて言うなら俺はそこそこの自由を手に入れたので書庫に入り浸り詳しい世界の情勢や歴史等を勉強しているってぐらいだ。
どうやら親父からは完全に見捨てられたようで、廃嫡はされてはいないが皇位継承権は剥奪されたとの事。
全く興味無いから別に良いがここまで酷いと逆に笑えてしまう。
幸福な異世界転生なんて所詮夢物語と露に消えたのだ。
この1ヶ月で手に入れた情報を整理しよう。
1 異世界転移or転生者は多数いる
2 魂が適合している勇者と適合していない不適合者の2種類がいる
3 不適合者は無能で蔑みの対象、利用価値等が無い限り帝国では処分対象
4 ユグドラシル帝国は東全土を統一していて、西に進行中、西にある各国を勇者達中心に蹂躙し好き勝手やっているらしい
5 勇者達は異世界チーレム状態
6 この国は昔覇王と呼ばれた異世界人が建国
7 中世ヨーロッパ風の世界で基本的に殆どの国が貴族制度を採用している
8 帝国は人間至上主義で獣人やエルフは基本奴隷である
とまあこんな感じ?かな.....正直大分クソな国、クソな世界だと思う。
ってか好き勝手やって、他者の絶望や死を理不尽に与えてそこから英雄や勇者だと言われヒーロー気取りの異世界人達はかなり不愉快だ.....ヒーローってのは信念を持って弱きを助け、強大な悪をくじくものでしょうが.....。
そうやって過ごしていると、どうやら俺の処分が決まったと通知が来た。
腐っても皇族だからな、命は取られないらしい...だが、西にあるゼーヴィング皇国のお姫様と婚約したからそこで暮らせとの事だ。
....まあ...なんだ、厄介払いついでに敵国に無能を人質として送り付けたって感じなのかな?正直政治はさっぱり分かんないけど....。
お姫様やその家族も無能を押し付けられて憤慨していないだろうか....。
まっ俺は逆らうなんて出来るわけもないし、大人しく向かいますよその国に。
母様がちょっと心配だけど.....声だけかけとかないとな。
「母様....俺ゼーヴィング皇国に....」
「清々した!!!私の家族を殺したあんたとあの人の息子を見なくて済みます!!貴方なんて産まなければ良かったのよ!!」
..........まあ分かってはいた、1ヶ月間毎日こんな感なんだから。
「母様では行ってまいります.....」
「.........................」
完全無視ですか.....悲しいなぁでも5年間一緒に過ごして産んでくれた人だからどんなに親なんかじゃないと思おうとしても母親を見捨てるなんて出来ない.....なんでだろうな、こんな酷い言葉をかけられてるのに...
母様との別れは悲しい形で終わってしまったが、ゼーヴィング皇国に向かう話は終わらない....結局これが母様との最後の会話になってしまったのだった