獣人族の姉弟
盗賊達を倒し、制圧した後俺はすぐにリーダー格の死体を漁り牢屋の鍵を全て取り出した。
そして、人質となっていた女達の前に獣人族の姉弟に話しかけられた。
「あ、あの....あ、危ない所を助けて頂いてあ、ありがとうございます...」
「えっと、人族の冒険者?さん助けてくれてありがとう!」
「いや、弟君がお姉さんを守ろうとしてくれたおかげだよ」
ホントに早期に介入出来たのはこの少年が注目されてくれたからだ、もしされていなければもう少し遅れていただろう。
「冒険者さん私はキリエ、こっちは弟のレクス」
「レクスです...!」
「あ、ああ、俺は冒険者のロイルだ。」
〔なんでそんな元気なのさ姉さん...!今大変なんだよ!〕
〔そりゃ大変だけど、この冒険者かなり有能っぽいし....それにカッコ...イイから〕
〔姉さん.....今ので惚れちゃったんだ〕
〔かも.....だってイケメンだし、強いし...私達の目的を手伝ってくれるかもしれないじゃん!〕
〔それは確かに...後で聞いてみよう姉さん〕
襲われかけた割には元気だなキリエという少女。
2人共見た目は俺のスキルを解除した本来の姿と同じような年齢っぽい。
姉のキリエは赤みがかった茶色の長い髪を後ろに纏めた、キツネ耳の少女。
暗い空間でも分かるぐらい美少女だ。
弟のレクスは姉と同じく赤みがかった茶色の髪を短髪にしているが、どこか気弱そうな感じだ。
こちらも耳があるが、レクスの場合姉より尻尾が特徴的に大きいようだ。
簡単な自己紹介等をした後俺達は他の牢屋の鍵を開けて行き、全ての女性達を解放した。
「ありがとうございます冒険者さん」
「....あり....あり....が」
「同じ冒険者に助けられるなんて....」
「お兄さんありがとうございます!」
等などそれぞれお礼を言われるが、本題はこれからだ。
このまま解放しても、森で死ぬかここで死ぬかになってしまう。
勝利条件は俺が護衛しながらの脱出だ。
仲間がいれば任せられるんだが、今回はソロだから仕方ない。
流石にこの何十人といるほとんど戦闘能力無く、弱っている女性達を護衛しながら盗賊と魔物全てから守るのは不可能だ。
魔物だけなら何とか出来るから、盗賊団を壊滅させてからの脱出になる。
「皆さんを解放したいのはやまやまなんですが、このままでは森で死ぬかここで死ぬかの状態です。
なので、皆さんには俺が盗賊達を倒してくるまでの間ここで待機してもらいます。」
「そんな!!」
「こんな所早く出してください!!」
「私達も冒険者です、戦えます!!」
「魔力も底を突いていて、武器も奪われ、弱っている貴方達に民間人達を守りながら脱出出来ると?無理ですね、自分が一緒にいても全員を守るのは不可能です。
1人でも人質に取られたら不味いんですから。」
「...........!」
「...........」
「今ならここはまだただの牢屋になっていて、敵にバレてはいませんので大人しくしていれば敵は来ないでしょう。
ここに町で買った結界魔法の魔法陣が書かれたスクロールがあります、これで1度きりですが結界を貼りますので安全は確保されます。
その間に俺が盗賊達全員倒してきます!」
この世界には一部の魔法の術式が記された魔法陣をスクロールに映して、魔力を通すことによりスキルを持たない人でも一度だけ使う事が出来るなんてことが出来る。
開発は過去の勇者らしい。
今では冒険者達の必需品として広く親しまれている、俺も過去の勇者には恨みは無いし、アイテムには罪も無いので普通に使っている。
「結界魔法のスクロール....めちゃめちゃ高価じゃん」
スクロールの内容によっては当たり前だが、金額が変わる。
『灯り』等の簡単な魔法なら比較的安価で誰でも買えるものだが、結界や魔除け等の実用的かつ希少性の高い物は高価になる。
Bランク以上のかなり稼いでいる冒険者達で無いと普段使いは出来ない代物だ。
「という訳ですので安心してください!」
更にこの状況なら他にも効果があった。
今の俺は見た目が青年にまで成長しているものの、11歳でCランクの冒険者だ。
今ここでそれが露呈されれば、Cランクのソロで子供というだけでパニックに陥ってしまうだろう。
だが、このスクロールを普段使いしている物だとすればそれは冒険者ランクが相応に高いと公言しているようなものだから相手も確認してこない。
今必要なのは実際の実力よりも肩書きなんだ。
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その後女性達は他の冒険者女性達の説得もあり、とりあえずはこの場で待機するという話に落ち着いた。
俺もこの後はザコ敵戦とラスボス戦を同時にやらなければ行けないので、休憩をしながら魔力を回復していた。
今更だが、チェンジスキルは魔力を使う。
しかも、チェンジしている間は自然回復しない....その代わり何もしていなければ減りもしない。
魔法を使えばそれは別として勿論魔力を使う。
なので、この姿のまま魔力を回復するには魔力回復薬を必要となる。
魔力回復薬とは、これも過去の勇者の開発で元地球の出身なのか、粒上の錠剤タイプだ。
瓶詰めして、大量に持っているぐらいには愛用している。
そうしていると、あの姉弟達が俺に近づいて来て、キリエが話しかけて来た。
「あの、ロイルさん!首都のロテルに戻ったら冒険者ギルドで少しお話してもいいですか?」
「あの、お願いします....」
「えっ、いや別に構わないが....今ここでは話せない話か?」
「ここでは無理です」
何か重要な話なのか....とりあえず了承しておこう。
ここを出た後なら姿がバレても問題は無いだろう。
「そうか.....分かった、良いぜ」
「ありがとうございます!」
「そうだ、ついでにお前らだけにこれを渡しておく」
俺はついでにこの姉弟にあるものを2つ託す。
「これは?」
「落ち着いて聞けよ?扉の鍵だ、もし30分以上経って俺が戻って来なかったら一か八か全員で逃げろ。
んで、これは魔除けのスクロールだ。
効果は15分、その間に森を抜けて冒険者達の近くに行けば守ってくれる....あくまで保険だ。」
「なんで私達に....」
「この中でなら1番信用してるからだ」
「....ありがとうございます」
「おう」
嘘だ、本当は一部の人達が獣人というだけでこの姉弟に悪感情を持っているのが分かるからだ。
他の人達に無いアドバンテージとして、持たしておけば町に戻るまで手出しはしないだろう。
流石に追われている状態での森の中や冒険者の近く、町の中でランクの高い冒険者と親しくしている獣人族に手出しをする程バカでは無いと思いたい。
その後は、アイテムの使い方を教えたり、この事が終わったら冒険者ギルドで会うために日程や俺への会い方を伝え、最後は3人で他愛も無い話をした。
そして、ささやかな休憩時間は終わりを告げ、俺は扉を開けた。
弱者の絶望で良い思いをしてきた盗賊達.....さあ、ヒーローショーの時間だ。




