幸せな世界の終焉3
リンと出会った心象世界から目が覚めると、俺を今にも食い殺そうとしていた魔物達は少し離れた所に囲む形でいた。
0距離からのスタートじゃないのは助かるが、いったい何が起きてこうなったのはさっぱりだ。
そして、使えるようになったスキルの知識が頭の中に入ってきた。
先程の契約の時とほとんど同じ感覚だ。
魔物達は何が起きたのか分かっていない様子だが、先程と同じように多少警戒しながらなのかゆっくりとした足取りでジリジリと迫って来ている。
いくらスキルが覚醒したとはいえ、Lvも1だし全ての討伐は恐らく不可能だ。
現状今持つスキルのうち『ヒロイックチェンジ』は使う事が出来ない、条件を満たせば使う事が可能のようだ....だが、『クラスチェンジ』『エレメントチェンジ』の2つは使うことが出来るがこの囲まれている状況で殲滅する力は無い....せいぜい一点突破で逃走を図る事ぐらいだ。
更に、心象世界でリンに言われた通り右腕が傷口は塞がっているものの肩から先が存在しない状態でもある。
今俺がやるべき事...勝利条件はエリザや家族の安否を確認し、勇者達を討伐又は勇者達から逃げる事だ。
障害物は現在地の皇宮の中にまで入り込んでいるこの魔物達....一点突破かつ速さと攻撃力が大事な状況.....よりやり方は決まった!
「よし!行くぞ!魔物共!エレメントチェンジウィンド!クラスチェンジセイバー!」
《ウィンドセイバーフォームを確認》
《スキル発動者の魂及び身体を再構成します》
スキルを発動した瞬間頭の中に機械的なアナウンスが流れ、身体が突然眩い光に包まれる。
そして光が晴れると....スキルを使う前の俺とは別人のような姿になっていた。
緑を基調とした外套に、どこからか出現した剣を携え更に、身長が青年程まで伸び、右腕が完全に再生されているのだ。
俺の姿が変わった事で魔物達は動きが止まった。
この間に頭で知識としてはあるものの、気になるステータスを開いてみる。
「ステータス」
ロイル・フォン・ユグドラシル(不適合)
Lv1 男 5歳
スキル
クラスチェンジ Lv1
エレメントチェンジ Lv1
ヒロイックチェンジ Lv1
剣術 Lv5
風魔法 Lv5
使い魔
天使族 リン
なんとステータスに剣術Lv5と風魔法Lv5が追加されているのだ!
スキルを解除すれば元に戻るが、一時的にとは言え使えないはずのスキルが使えるようになる強力な効果だ。
今のスキルLvでは追加されるスキルはLv5固定だが、もしかしたらチェンジスキルのLvが上がれば追加スキルのLvも上がるかもしれない。
現状チェンジ出来るクラスとエレメントは共に6つ。
先ずクラスは『セイバー』『ランサー』『アーチャー』『ウォーリアー』『アサシン』『ウィザード』
でエレメントは『フレイム』『ウォーター』『ウィンド』『ランド』『シャイン』『ダーク』
だ。
今回は速さに優れる魔法の風とバランス良く強化し、他に比べ使い慣れた武器の剣で戦えるセイバーにした。
武器だが、スキルを発動すると勝手に出てくるようだ....恐らくスキルLvを上げると武器性能も上がりそうな気がする。
「なるほど....俺のスキルはこういうスキルなのか...面白いな!
さて、魔物共!通らせてもらうぞ!!」
戦いが始まった瞬間俺は風魔法の魔力を剣に纏わせる....それにより剣の周りに風が渦巻き徐々に強くなっていく。
これは各属性魔法Lv2で使えるようになる体や武器にその魔力を纏わせることで強化する魔法...魔力装だ。
同じ要領で足にも纏わせることでスピードを上げる。
「食らいなぁ!!エアスラッシュ!!」
その瞬間スキルによって強化された足で思いっきり地面を蹴り出すと爆発したかのような勢いでとりあえずの目的地、玉座がある方向に向かって文字通り飛び出した....そしてその勢いのまま剣を振り抜くと強い風の斬撃が進行方向に存在する魔物を遠くまで切り裂いて行く。
「すっすげぇ....これがスキルの力....これがあれば!!」
先程までの自分からしたら考えられない力と身体能力に俺は興奮していた。
この力があれば皆を助けられるはずだと....。
この後1度着地を挟み同じ事をする事で魔物達の塊から脱し、急いで玉座の間に走り出して行くのだった。
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時は少し遡り玉座の間
そこではフリードとローライグが勇者が直接皇宮に乗り込んできた事に対する対策等を講じる為の話し合いをしていた
「父上....何かしてくるとは思っていましたが、ロイルを利用して勇者を直接城の中に送ってくるとは思っていませんでした....更に単体では弱いとは言え見た事も無い魔物をあれほど....申し訳ありません...」
「このまま国を蹂躙される訳にはいかんな.....しかし、勇者.....我が国の勇者は」
「その勇者ってのはコイツのことかァ?」
「貴様....」
そこに現れたのはゼーヴィング皇国の勇者の首を持つ、勇者リュウタだった。
ゼーヴィング皇国の勇者は四肢が存在せず、顔は恐怖に歪んでいる....無惨な姿だった。
「リョウ!貴様リョウを殺したのか....そのような残酷なやり方で!」
「ああ、俺が殺したぜェ...コイツあんまり強くなかったがな....ここに来たのはあんたらに聞きたい事があるんだよ」
「聞きたい事だと?話すと思うのか?」
「話さないなら話さないでうちの相方が殺し回りながら、対象を探すだけだからよ...時間はかかるが多分見つかるだろうしな」
この場にいない勇者シンヤは皇宮の中で殺戮を行っていたのだ。
首を一閃...他の外傷は無く。
「その聞きたい事とはなんだ?」
「父上!?こんな奴の話を聞くのですか!?」
会話に参加していなかったローライグはずっと考えていた....国を存続させる、自分達が生き残る術を....しかし、相手は勇者そしてテレポート能力者な上...もう一人いる勇者が殺戮をし続けている状況...天秤にかけた結果とりあえず話を聞くことにしたのだ。
「やっと口を開いたかよ王様ァ。
俺達が探しているのは......エリザベート・ド・ラ・ゼーヴィング....アンタの娘だ」
「何だと...!?貴様ァ俺の娘に手を出すのなら、楽に死ねると思うなよ」
敵がエリザベートを探していると言った瞬間ローライグは悟った....コイツらの要求に従う事は完全に無い事を....。
「俺達帝国は翡翠色の瞳を持つ鍵となる女が欲しい、それがエリザベート姫だ...引き渡してくれたらこれ以上誰も殺さないし、エリザベート姫も丁重に扱うと約束するぜェ」
「お前達の事は信用出来ない!
それに愛する妹が不幸になる国には行かせやしない!
」
「ふざけるな!貴様ら帝国に娘を渡すことは無い!!それに鍵だと.....貴様等どこまで知っている!」
「父上いったいどういう事ですか!?僕達皇族の瞳には意味があるんですか!?」
「正確にはこの瞳を持つ純潔の女だ....だが、これはこの国の王のみが知らされる言い伝えだ....だがそれをなぜ帝国なんぞが....!」
「さぁな、俺様達はなんも知らねぇよ...皇帝陛下と七皇勇者とかなら知ってんじゃねぇか?俺の任務はエリザベート姫を無傷で連れ帰る事と、相手が抵抗すれば皆殺しにしろってだけだ。
それ以外は興味ねぇよ....さて、拒否するってんなら相方が城の中から見つけてくるまでの間あんたらを殺すために動くが良いのか?」
「くっ......!」
ローライグとフリードは確かに戦闘能力も備えた優秀な人間だ....だが、それはこの世界由来の存在としてはに過ぎない....異世界人やそれに関係するもの....達と比べれば特別な権能とまで言えるほどの力は無いのだ。
だから、この場で勇者リュウタが殺すために動くと言う事は自分達2人が死ぬという事を示している事は頭では分かっていても家族を売ることは出来ないのだった。
「そうそう、ここに来るまでの間によォ貴族の女達の茶会にちょっとお邪魔してきたぜェ...フレミアっつったか?雑魚の癖にシャシャってきやがってよォ....ついつい痛めつけて殺しちまったぜギヒヒヒ」
「俺の女を殺しただと!貴様ァァァァァァァァ!!!」
「君だけは絶対に許さない!!」
その瞬間ローライグとフリードの中で何かが切れた。
愛する家族を殺された怒り....勝てるはずの無い戦い...しかし、挑まずには居られない例え、その結果が身の破滅だとしても....。
「やっぱよォこうでなくちゃなァ!!」
「任務対象を保護した、帰るぞリュウタ」
そう言って勇者リュウタ、フリード、ローライグが動き出そうとした瞬間もう1人の勇者シンヤがエリザベートを抱えながら現れた。
「なっエリザ....という事は....護衛の騎士は」
「殺したよ...苦しまないように一瞬で...さあリュウタ行こう、これ以上殺す必要は無いはずだ...対象は手に入ったんだから」
「貴様ら逃がさんぞ!エリザを返してもらう!!ぐうおおおおお!!」
ローライグがシンヤに向かってエリザベートを取り返そうと突っ込むもテレポートで一瞬のうちに回り込んだ勇者リュウタに両腕を切り飛ばされてしまう
「父上!妹を....エリザを渡してたまるものかぁ!!!」
それを見たフリードも同時に突っ込むもこちらは勇者シンヤにより首を一閃され、命を落としてしまった...。
「フリードォォォ!!貴様らァ!!よくも我が息子を!!」
「うるせぇんだよ!おっさん!!良い加減諦めやがれ!!現地人が!」
「ぐあああああああああああ!!」
肘から先を無くし、切り口からドバドバと血を流すローライグ...しかし、それでも立ち上がり2人に戦いを挑むも...今度は右足を斬られてしまう...。
「もう止めろリュウタ....彼はほっといても出血多量ですぐに死ぬ....首都も人口魔物達で既に陥落している、早く帝国に帰ろう」
「ンだよ良い所なのによ....でもまァ早く女共に会いたいって言うのもあるし、この辺にしといてやるか...じゃあな王様!娘は頂いて行くぜ!ギャハハハハ!」
「では失礼します、娘さんは丁重に扱いますのでご安心下さい、危害は加えません....そして、すいませんでした....」
「ま....待...て貴様....ら...」
そうして彼等は皇宮のパーティ等で使う大部屋の方に去って行き、ローライグにはそれを見送る事しか出来ないのだった。




