おとぎ派遣(1分サクッと小説)
ここは病院のある一室…
幼い男の子が診察を受けていた。
のんびりと女医さんに身を委ね、口内を見られていた。
暇で退屈で特にやることもない持て余す時間。
そんな時彼らは人の脳内に遠征する。
通称おとぎ派遣。
人類が長い歴史とともに生み出した由緒あるキャラクターがこのような空虚な時間を埋めてくれるのだ。
今日も様々なキャラクターが派遣されていた。
剣士が2人に沙悟浄、ピノキオ、宇宙人、浦島太郎、果てはランプの精まで…
今日は随分と豪華である。
空虚な時間を満たすためにそれぞれ何か話している。
剣士達は各々の武勇伝
沙悟浄は天竺について
ピノキオは嘘をつくことの怖さを
宇宙人は彼の国の政治や発展について
浦島太郎は竜宮城の素晴らしさについて
ランプの精はしきりに願いを叶えてやろうと声をかけている…
各々が各々の話したいことを主張し、故に誰の言葉も全くもって聞き取れない。
そしてそれを子供がボケーっと脳内で眺める…
不満を持った方もいるだろうがこれでいいのだ。
治療中口を閉じることも笑うことも許されない状況下、面白すぎてもつまらなすぎても困るのだ。
おとぎの国の住人がわちゃわちゃと騒いでいる。
これだけで空虚な時間は埋まり、子供も丁度良く満たされるのだ。
2129年、痒いところに手が届く時代になったものだ。