ファンファーレ
斬った。
叩いた。
刃を横からはじいた。
蹴った。
腕をつかんで止めた。
横なぎに顔を殴られた。
斬られた。
刺した。
足を払った。
何度も、引き倒して、馬乗りになって攻撃を加えた。そのたびに、腕力だけで転がされ、足にしがみついて止めた。振り払われて踏まれた。
泥仕合だった。
男は、執拗にルナだけを攻撃しようとした。そうでなければ、アカリは何十回も『死んで』いただろう。
時間経過はわからない。
この肉体には疲労が蓄積しないので、いつまでも戦い続けられるような気がする。が、そんなことはない。集中力は、いずれ切れる。
次の瞬間かもしれない。
けれども、今ではない。
もう少しだけ、と思いながら、男の背中に斬りつけた。
もう少しだけ、と思いながら、ルナをかばって鎧ごしに刃を受けた。
もう少しだけ、と思いながら、──
そうして、途方もない長い時間のあと、男は倒れた。
*
花吹雪が散った。
管楽器の音が、唐突にあたりに響く。
ファンファーレだ。
『おめでとう! 君はついに宿敵をたおし、迷宮を攻略した。王宮戦士アカリの名は、魔王を封印した勇者として、永遠に語りつがれるだろう。』
アカリは、無味乾燥なメッセージを垂れ流すヘルパーから目をそらして、ルナの目をみた。石化が解除されたわけではない。まぶたを見開いたまま、ぴくりとも動かない。かたい、ざらざらした灰色の目。義眼のような。
朱里は、ふと衝動にかられて、その目にそっとキスをした。
そして──、




