邂逅
しゃん、
しゃん、
しゃん、
と、鈴の音がきこえる。
覚えている。
これは、私の『信者』たちが、儀式のときに鳴らしていた鈴だ。
私は彼らを従えてなんかいない。
ただ、乞われるままに癒していただけ。
それなのに、かれらは私を『信じて』、『愛して』、『守って』くれた。
勝手に。
「……師よ、」
やさしかった中年の男性。カタルニという。
「あなたを、愛します。」
なにを、馬鹿なことを。
勝手な──
ぱりん。
ぱりん。
ぱりん。
鈴が、割れる音がする。
私がやったのではない。そんな力はない。
では、誰が?
『見つけた』
低い声がした。
見たこともない、派手な格好をした男が、闇のなかに立っていた。ぎらぎらと小さな宝石を縫い付けたマントに、羽根つきの赤い帽子。自信ありげにまげた口元、それから、
穴のあいたように、深い闇をたたえた目。
『……やっと、見つけた。』
その、声とともに、ルナは堕ちていった。
*
「……ルナ!」
かすかな、光。
からからに乾いた床の上に頬をつけて、疲れ切ったルナはだらりと横たわっていた。血相をかえたアカリの足音。気がつくと、抱き起こされて、アカリの腕のなかにいた。
「動くなと言ったのに!」
「だって……、魔物が。」
「この階に魔物なんか、いやしない。」
アカリは、自分の着替えを枕にすえて、ルナを寝かせた。全身が、だるい。動けない。
「眠りの罠にかかったみたいだな。だいじょうぶ、しばらくじっとしていれば。」
「……へんな、夢をみたの。」
アカリのきれいな目をみつめて、ちいさく、ルナはいった。
「気にするな。……ともかく、休みな。」
ちいさく、ルナの背中をたたいて、……朱里は嘆息した。




