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異世界八景  作者: 楠羽毛
夢の世界
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捜索

「そこを動くな!」

 叫び。その声が消えると同時に、どんとつま先近くに壁が落ちる。

 とたん、暗闇。

 背筋がぞわりとした。松明は、アカリの側にある。火おこしの道具すら、自分は持っていない。

 壁に手をあててみる。がんじょうで、とても動きそうにない。冷たい。耳を近づけてみても、向こう側の音すら聞こえない。

(どうしよう……)

 何も見えない。床と壁を触って、位置関係をなんとか把握する。

 ちょうど進行方向を、壁がふさいだ格好だ。開ける方法があるのかどうか、全くわからない。壁のむこうで、アカリが今やっているのだろうか。


 ぎらりと、何かが光った。


 闇のなかに、ひかる目。3対の。

(魔物──)

 ぞっとする。灯りも武器もない。

(喰われるの!?)

 アリーシアで見たものが、脳裏にちらつく。

(武器……、)

 杖を握る。心もとない。

 魔物は、ゆっくりと近づいてくる。ということは、まだこっちには気づいていないのではないか。そう、思う。

 アカリが助けに来るにせよ、すぐは無理だろう。とにかく、移動しなくては。

 慎重に、壁をつたって動く。足元も見えない。先程の落とし穴を思い出して、背筋が凍る。しかし、進むしかない。

 しゅうしゅう、と吐息のような音がきこえる。

 すぐそばに、いるのか。

 暗闇の中、這うように、足音を殺して、一歩ずつ。


 そうして、5分ほども歩いて……ルナは、ようやく息をついた。



「ルナ!

 壁落としの罠は、いちど発動すると、もう元には戻らない。罠というより、迷宮そのものがつくりかえられてしまうようだ。

 朱里は、苦労して壁のむこうにまわりこんだ。迷路をすべて覚えているわけではない。罠をさぐりさぐり、時間をかけて辿ってきたのだ。


 いない。


「ルナ! ルナ! 菊田瑠奈!」

 叫ぶ。つい、馴染みのある名で。

「動くなってゆったのに……」

 ぶつくさと、男の声のままつぶやきながら、松明であたりをてらす。いない。

 この階には、魔物はいないはず。罠だって、じっとしていれば発動しない。いったい、なぜ。

 松明をふりまわすように辺りを見回していてふと、気づく。

 壁に、6つの穴。そこから、光と、かすかな音が。

(これか……)

 ただの、こけおどしの罠だ。危険性がないので、意識の外だった。


 とにかく、探さなくては。

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