男と女
轟音、ふたたび、溶岩がはねあがり、しぶきをあげる。
「ばかな、」
あわてて後退しながら、ルードレキがつぶやく。
いかに巨人といえど、生きていられるとは思えない。
隣をみる。クリムルは動かない。声をかけようとして、表情をみてためらう。
クリムルは、無言でマグマに近づいていく。
「まて!」
ルードレキはおもわず叫んだ。
うちよせる岸までいって、熱気にあてられ、たちどまる。しかし、
「これ……」
クリムルは、息をのんで、しゃがみこんだ。
「……これ、……溶岩じゃない。」
「なんだと?」
ルードレキはクリムルの近くに寄り、湖面をしばらく睨みつけてから、おもむろに手をつっこんだ。
熱い。しかし、火傷するほどではない。
「……湯じゃないか。」
「それじゃ……」
「……おれたちは、騙されていたんだ」
「騙されていたって、……だれに?」
そのとき、大きな水音がした。クリムルが顔をあげると、
ラードナーラをつまみあげた、赤い湯でずぶぬれの巨人。
そして、
湖岸に、ふたりのゼラ人。ひとりは、ひげの長い年配の男で、もうひとりは、みじかく切り詰めた青いドレスをきた、若い女。
レカーダと、カーラ姫であった。
そして、近くで見ると、竜と見えたものは、ただの霧にまぎれた大岩であった。




