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異世界八景  作者: 楠羽毛
地底の世界
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わたしのすべて

 わたしは、カーラ姫が生まれたときから、そばづかえの騎士として一緒にいました。

 わずか10日しか、年は違いませんが、姫の生まれたばかりの頃のことも、はっきりと覚えています。

 姫とともに育ち、姫とともに老い、死ぬのだと、そう、思っていました。

 母と女王陛下が、そうであるように。

 姫を誘拐したといわれる、レカーダ総務大臣のことも、よく知っています。

 レカーダ大臣は、女王陛下のきょうだいで、姫のおじにあたります。女王の子は他にも多くいますが、カーラ姫のことを、特別に気にかけていた様子でした。

 姫も、大臣と話すときはよく笑っていましたから、気があっていたのかも知れません。

 わたしと二人きりのときに、そっと耳打ちされたことがあります。

「ねえ、あの人って本当に私に夢中なのね!」

 本当に、たのしそうに。

 そのときは私も馬鹿でしたから、うれしく思って、「本当にようございました」などと言っておりました。

 その、一ヶ月後です。

 レカーダ大臣が、姫に会いにきたのです。それ自体は、いつものことだったのですが──。

 その日にかぎって、二人きりにしてくれと言ったのです。

 普通なら、とんでもないことです。けれど、私が口を開く前に、姫が満面の笑みをうかべて答えてしまったのです。

「もちろん! たくさんお話しましょうね、おじさま」

 そうして、私は部屋の外に出されました。

 そのまま、長い時間がすぎて……


 アカリタケの光が少しずつ薄れて、夜の帳がじっとりと屋敷を覆いはじめてから、私は、ようやくおかしいと思いました。


 そのあとのことは、誰もが知っている通りです。 


 ともかく、カーラ姫は、私のいちばん古い友人で、主人で、かけがえのない家族で、それに、……それに、


 私は、姫がいなくなったら、どうしていいかわからないのです。


 ですから、

 わたしは、どうしても姫を見つけださなくてはなりません。


 たとえ、竜が立ちふさがるとしても。

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