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異世界八景  作者: 楠羽毛
地底の世界
35/206

シマリス

 ふたたび、現在──



 朱里は、ぱちぱちと目をしばたかせて、それをつまみあげた。

 シマリス、のように見える。マモー族と同じように上半身だけ服を着て、つばのついた円い帽子をかぶっている。しっぽは太く、しましま模様。

 高い声で、なにか言っている。

「巨人よ! おれはジャスブルーのラードナーラだ。おまえを──」

 朱里は無言のまま、つまんだリスをさらに顔に近づけた。

 ひげは長く、目つきはリスにしてはするどい。白っぽい毛。身につけているのは、革のジャケットだろうか。

 そして、腰に剣をさしている。大きさは爪楊枝のようだが、きちんと鞘に入っている。

 朱里は、むぞうさに左手の指で柄をつまんで、剣を抜いた。

 爪楊枝。

 と、いうわけではないが……

「……これ、木剣?」

 朱里がつぶやくと、リス、いやラードナーラは、あわてて手を動かして叫んだ。

「返せ! うちの家宝だぞ」

「これじゃ切れないじゃない」

「刃物のことを言ってるのか? ゼラ族の剣士が、そんなものを腰にさすものか」

「ふうん……」

「巨人さま、」

 ナリーが囁く。

「この男は、ゼラ国の刺客です。巨人様の命を狙っているのです」

「そうなの?」

 さして驚きもせず、朱里はラードナーラにそう訊いた。

 じっと、切れ長の目を大きくして見つめながら。



「おれは、……あんたを助けに来たんだ」



 なぜ、そう言ったのか、ラードナーラ自身にもわからなかった。

 ただ、言葉がすべり出ていた。

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