シマリス
ふたたび、現在──
*
朱里は、ぱちぱちと目をしばたかせて、それをつまみあげた。
シマリス、のように見える。マモー族と同じように上半身だけ服を着て、つばのついた円い帽子をかぶっている。しっぽは太く、しましま模様。
高い声で、なにか言っている。
「巨人よ! おれはジャスブルーのラードナーラだ。おまえを──」
朱里は無言のまま、つまんだリスをさらに顔に近づけた。
ひげは長く、目つきはリスにしてはするどい。白っぽい毛。身につけているのは、革のジャケットだろうか。
そして、腰に剣をさしている。大きさは爪楊枝のようだが、きちんと鞘に入っている。
朱里は、むぞうさに左手の指で柄をつまんで、剣を抜いた。
爪楊枝。
と、いうわけではないが……
「……これ、木剣?」
朱里がつぶやくと、リス、いやラードナーラは、あわてて手を動かして叫んだ。
「返せ! うちの家宝だぞ」
「これじゃ切れないじゃない」
「刃物のことを言ってるのか? ゼラ族の剣士が、そんなものを腰にさすものか」
「ふうん……」
「巨人さま、」
ナリーが囁く。
「この男は、ゼラ国の刺客です。巨人様の命を狙っているのです」
「そうなの?」
さして驚きもせず、朱里はラードナーラにそう訊いた。
じっと、切れ長の目を大きくして見つめながら。
*
「おれは、……あんたを助けに来たんだ」
*
なぜ、そう言ったのか、ラードナーラ自身にもわからなかった。
ただ、言葉がすべり出ていた。




