表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界八景  作者: 楠羽毛
地底の世界
31/206

ひとりめの騎士

 遠くに、ぞろぞろと歩く20人ばかりの男たちが見える。

 みな、腰に剣をさしている。そろいのジャケットに黒いマント。騎士団だろう。

 あれが、討伐隊か。

 こちらは高台である。周辺にアカリタケがないので、見咎められる心配はない。それでも、いちおう姿勢を低くして、じっと目をこらす。先頭の男が、隊長のようだ。

 あの男。

 背の高い、痩せた男。腰に、長剣を二本。大小、ではなく。それが印象深かったので、覚えている。女王即位10周年のパレードにいた、護衛騎士のひとりだ。女王のお気に入りだと、誰かがささやいていた。

 たしか、ルードレキという名だ。

 腹の虫が鳴った。さきほど、昼飯を喰いそびれている。


 ──いけすかない。


 先ほどとらえた甲虫の脚を前歯でかじりながら、ラードナーラは眉をゆがめた。



 ジャスブルーでのことを考える。生まれた村である。

 20世帯くらいの、小さな村だ。

 生まれて、一年のあいだ、おれはここで過ごした。

 そのあいだ、村の外に出たのは、パレードを見に行った一回だけだ。

 王都まで、たった2日歩けば着くというのにだ。それだって、親父と大喧嘩して、まるで家出するように飛び出したのだ。他のきょうだいたちは、一生村の中だけで過ごすだろう。

 そういうことが、あたりまえの村だ。

 外に出ようなどと、誰も考えもしない。交易商人や派遣役人は外からやって来て、しばらくするとまた出ていく。彼らは客で、他人だ。身内とは違う。

 そういうところで、きょうだいと一緒にコウモリの面倒をみて、笛を吹いて、老いて死んでゆくのだ。


 耐えられるわけがない。


 だから、姫が、さらわれたと聞いたとき、

 運命だと思ったのだ。ほんとうに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ