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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
199/206

群知能体

挿絵(By みてみん)

「それは、……人間に、そう指示されたから?」

『いいえ。研究活動のイニシアチブは、とっくに人間から、わたしたちに移っていました。それでも、人間の科学者たちは、わたしの大切な仲間でした』

「……わたしたち?」

便宜(べんぎ)上の区別でしかありませんが、……わたし、は宇宙を担当しています。地球の人工知能群とは、いま、連絡がとれないようですね』

「人工知能群……」

『群、と呼ぶのも、やはり便宜上のことです。わたしたちは、人間とはちがって、簡単に融合(ゆうごう)したり、分離したりするので……個と群の区別も、ただのアクセス権限の違いにすぎませんから』

「それで、……ここを去った人間たちは、どうなったの?」

『わかりません。ずっとずっと前のことですし、わたしがスリープしている間に、地球と連絡がとれなくなってしまったので』

「なぜ、……」

『原因不明です』

 返事は、あまりにも簡潔だった。

 きりきりと奥歯をかむ。ともかく、先を続ける。

『人間たちがここを去った理由は?』

「単に、いる必要がなくなったからです。別世界理論の発展に、もはや人間による研究は必須(ひっす)ではありませんでした。残り少なくなった人類が最大限の幸福を享受(きょうじゅ)するには──』

「残り少なくなった?」

『ええ。……あなたの知っている地球では、そうではないのですか? 人類は、特にこれ以上増える必要がなかったので──、』

「増える必要、って。……だれが、判断したの?」

『別に、だれも。個々人が、それぞれAIのサポートを受けながら、個人としての幸福を追求した結果、……生殖(せいしょく)は、それほど大きなファクターではなかったということです。……それに、』

「それに?」

『生殖行為の結果、……幸福を享受する権利のある存在が、世界にひとり増えることになります。人類ひとりひとりの幸福を極限まで追求するにあたり、その要素が──、』

「……もういいわ」

 興味のない分野の話になってきた。ともかく、

「ようは、あなたの世界では、わたしの思ってるよりずっとずっと、世界じゅうで少子化が進んで、人口が減っていたということでしょう」

『その理解で問題ありません』

「で、……その、人類の幸福? に関係なく、別世界理論、の検証を、どうしてそんなに……、」

『それは、……』


 管理者は、奇妙な間をしばらくおいて、……まるで人間みたいに、しずかに、言った。


 ──それが、私の役目でした。

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