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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
198/206

別世界理論

挿絵(By みてみん)

「……なにが、起こったのか、あなたは把握しているわけ?」

 あなた。

 人工知能をそういうふうに呼ぶことはたびたびあるが、ただのレトリックにすぎない。ただのプログラムに人格はないのだから。

『いいえ。……ただの、推測です。別世界理論は、まだ十分に検証されたわけではないので──、』

「別世界理論?」

『あなたが、最初に手をつけた理論ですよ。ライト研究員』

「そんな理論は知らない。」

『知っていたはずです。……あなたが、私の知っているエマ=ライト研究員ならば』

「どういう、……」

 と、反射的に言いかけて、口をつぐむ。

『ええ。……意味は、おわかりですね。ライト研究員』

 わかっていた。

 当然、そうなる。ただ、……あらためて言われると、やはり衝撃的(しょうげきてき)だ。

「この、……世界には、別のエマ=ライトがいた?」

『別、といっていいかどうかはわかりません。あなたが認証に使用した生体情報は、わたしが記録しているものと一致しました。平行世界に、これほど近い存在がいるというのは──、』

「ずいぶん、(くわ)しいのね?……その、別世界理論、というやつに?」

『ええ。まだ、理論上の概念(がいねん)にすぎませんが。一度も、実験する機会に(めぐ)まれなかったので──』

「実験は、したはずでしょう。わたしが。その、別世界理論とやらに(もと)づいて計画したわけではないけれど、結果的には──、」

『その実験は、こちらでは行われていませんよ、ライト研究員』

「……さっき、わたしが手をつけた理論だといわなかった?」

『あなたがどういう実験に参加したのか、わたしは知りませんが。わたしの知っているかぎり、別世界理論はまだ検証する方法が発見されておらず──、』

「なら、……わたしは?」

『ライト研究員。あなたは、このステーションに最後まで残った理論物理学者のひとりでした。あなたたちが、地上に降りてから──、』

「待って!」

 おもわず、大声。喉が()けそうになる。

「わたしが、……最後に? いや、わたしだけでなく、つまり全員──」

『ええ。ですから、──』

 エマがつぎの言葉を探しているうちに、『管理者』は、はっきりと、きれいな声で告げた。

『あなたに出会えて、……ほんとうに嬉しかったのです。わたしは』



 別世界理論を検証する方法を、わたしはずっと探してきました。

 人間たちが、宇宙を去ってからも、ずっと……、


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