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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
197/206

ミラー人工知能

挿絵(By みてみん)

「……テイラー研究室長に」

『人事に齟齬(そご)があるようですね、ライト研究員』

「人事に?」

『ええ、ライト研究員。あなたの……』

 そこで、意味ありげに間をおいて。いかにもAIらしい、芝居(しばい)がかった話し方だと、ため息。

『あなたの所属していたステーションでは、研究室長は、……』

「あなたの宇宙では、と()()えたら?」

 ずばりと、言ってやる。

『おっしゃるとおりです、ライト研究員』

『管理者』は、動揺するそぶりもみせない。──もちろん、AIならば、そもそも動揺なんてするはずもない。

「それで、──あなたは? 管理者? それがシステムの名称(めいしょう)?」

『ええ、そうです。……名称というか、通称といいますか』

「どちらでも。……でも、このステーション群の運行を、完全に自動システムだけで行っているはずはないよね? 人間は当然いた」

『はい、ライト研究員』

 こんな問答は無意味だ。あいてはミラー人工知能なのだから、こちらの望む回答を推測してかえしてくるだけだ。

 それでも、材料にはなる。

『人間は、いました。過去には』

 ぞくりと、背筋に悪寒。

 そうであろうと、思っていた。が、……いや、そもそも人工知能のいうことだ。これが真実というわけではない。あいては、わたしの考えていることを、能力の範囲内で先回りして答えているだけ──、

 意味なんか、ないのだ。

「それでは、」

 すっと息をすいこんで、決定的なひとことを口にする。

「なにものかの侵略で、……人類は、」

『いいえ』

 また、笑ったような声で──、

『かれらは、必要がなくなったので、──』

「なにが!」

『ここにいる必要がなくなったので、撤退しました。もともと、このステーションにおける研究活動は、人工知能が統括していましたので……、』

「人工知能が? 統括?』

『ええ、ライト研究員。何か問題でも?』

「それは、──」

 ちいさく、うめく。


 これは、本当に、ミラー人工知能か?


 わからない。

 が、……ともかく、話し続けるしかなかった。

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