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メモ領域
「……言語設定、たぶん、ここ」
朱里にいわれるままに、読めない文字があるところをつつく。
「で、」
「あとはわかるよ」
English、とサンセリフで表示されたところをつついて、ふっと息をつく。
切り替わった。
画面の中心に、ぴいっと大きなポップアップ。
『言語設定が切り替わりました』
それから、
『管理者がスリープしています。起動しますか?』
真っ赤な警告マークとともに。
「……ん、」
画面下部のメモに目をやる。こちらは、英語に切り替わらないようだ。
「これ、……なんて書いてあるの?」
「ええと、」
端末をぐっと目に近づけて、朱里はぼそぼそと読みあげた。
「『3月28日 前線基地の縮小により全員撤退 個人的には無念であるがやむを得ず 迎えは管理者に任せる』。……迎え?」
「迎え、……」
考える。
なにを、迎えに?
わたし? それとも、朱里?
それとも、──
*
長いあいだ迷ったが、結局、スリープを解除するしかなかった。