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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
190/206

ぽっかりとあいた穴に、

挿絵(By みてみん)

「……起きたの?」

 朱里が目をあけると、エマは床の、……いや、レール側の板に、四角い穴をぱかりと開けて、ハッチのとなりにあるコンソールを睨んでいた。

 いつのまにか、体がほとんど浮いて、車両の前方に移動している。微小(びしょう)重力。列車が停止して、遠心力がなくなったのだ。

 それにしても、……減速するあいだ、ずっと寝ていたなんて。

 シートベルトも、していないのに。

 体じゅうが、うっすら痛い。やっぱり、疲れているんだろうか。それとも、減速時にどこかにぶつかったのか。

「なに、してるの?」

「環境チェック。温度と気圧と酸素濃度(のうど)と……、」

「空気、あるの?」

「……たぶんね。あらかじめ最低限のシステムを起動させておいたから。今のところ、エラーは出てない」

「じゃ、──」

「念のため、船外服を着ていってもいいけど。どうする?」

 ほんのすこしだけ迷って、朱里は首を横に振った。

「……このままで、いい」

「オーケー。じゃ、私もそうする。めんどくさいし」

 そう言い終わる前に、エマはハッチレバーを引いている。

 きゅるるるる、と耳に響く音。レバーが勝手に回転する。それから、一瞬だけハッチが浮いて、蝶番(ちょうつがい)が動く。


 ぱたん。


 気圧差もないらしく、風はない。ほとんど、無音。ぽっかりと。

 じんわり、いやな(にお)いのする(あせ)が漏れ出てくる。

「行こうか。」

 手汗でじっとりと()れた指先を、ぐいとエマが引く。荷物を背負ったエミーが、後ろからこちらを見ている。

「うん、」

 ちいさく、うなずく。ぎゅっとエマの手を握り返して、


 そのまま、ふわりと跳ぶ。

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