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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
189/206

スターマップ

挿絵(By みてみん)

「……(なた)とロープ」

 おしころしたような低い声で、朱里はつぶやいた。

「え?」

「鉈とロープ。それが、夢に出てくるの」

「それはまた、……物騒(ぶっそう)

「なんだか……現実との境目が判然としなくて」

 はァ……、っと、深いため息を足下におとして。

「……まだ、夢を見てるみたい。地球のことは、よく思い出せないし……」

「おあいにく。現実です。たぶんね」

 エマはぎゅっと眉根(まゆね)を寄せて、窓の外をみた。列車は猛スピードで走っているが、遠い宇宙の星々は、まるで動いているようにはみえない。

 けれども、星のかたちは。

「……違うんじゃ、ないかな」

 確信はない。ここでは、スターマップと比較できないし。

「なにが?」

 問いかけてくる朱里を、ちらりとみて、少し考える。ぱちりと目をとじて。ほんのちょっとだけ。

 ──それから、もういちど目をあけて、

「たとい、月基地が破壊、いえ、あとも残さず完全に解体撤去(てっきょ)されたのだとしても──、」

 話を続ける。

「なんの話?」

「ダイソン衛星がぜんぶ堕ちたのだとしても、ステーションのシステムと整備機器が新型に更新(こうしん)され、にもかかわらず放棄(ほうき)されたとしても、地上で何かが起こって、いっさいの通信が途絶(とぜつ)しているのだとしても──、」

 それらだけなら、まだ説明はつかなくはない。


 ないが──、


「スターマップは、誤差?」

「え?」

 実験船のシステムを100%信用してよいか、といわれれば、ノーだ。

 超光速粒子生成炉と、長時間にわたる高速移動が、システムにどういう影響を与えるのか、まだ誰も知らない。とくにマップシステムは、完全に壊れていたっておかしくない。地球を認識できたのがふしぎなくらいだ。

 それをいうなら、わたしの脳だって──、

(──やめよう、)

 その可能性を検討するのは、人がいるところに着いてからでいい。


 それよりも、

(スターマップのことは、置くとして。)

 わたしの認知(にんち)能力も、壊れていないものと仮定して。

 それ以外の諸々を、いちばん単純に、説明できる答えは──、


 ……たぶん、侵略(しんりゃく)


 何者か、の。

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