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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
184/206

くりかえされる加速の感覚

挿絵(By みてみん)

 それから、しばらくして──、



 しずかな、音。

 モーターの駆動(くどう)音。それから、くりかえされる加速の感覚。

 もう、手すりをつかまなくても足はきちんと床につく。加速しきったトレインの内部には、およそ1Gの疑似重力がある。地球のまわりを、チューブに沿って高速で進むことにより、遠心力が発生しているのだ。

 ふいに、エマがこちらをみて口を開く。

「……こっち周りしかないからさ、時間かかるよ」

「え?」

「遠心力の関係でさ。地球の自転方向にしか走らないことになってるの。……第1ステーションまでは、こう、ぐるっと遠回りに」

「……地球を一周しちゃうってこと?」

「正確には、一周の六分の五ね。……だから、すごく時間かかるよ」

「ふうん……」

 朱里は、あらためてあたりを見回した。

「ほんとに、……電車、みたい」

 向かい合わせに、つくりつけの長椅子がふたつ。そのあいだに広い空間。床はそっけないリノリウムで、両側の窓には星空が見える。

「トイレは、むこうの車両ね」

「うん、」

寝台車(しんだいしゃ)もあるから。……ま、楽にしてて」

「はぁい」

 ふっと息をつく。また、頭がぐらぐらする。重力の変化は、体によくない。

「……そういえば、」

 むかいの席で、かるく腕組(うでぐ)みをしてすわっているエマに、小さく声をかける。

「なに?」

「どうして、……第1ステーションに行くの?」

「どうしてって、……昇降機のあるホールが、空気漏れで。あそこを通らないと、上にも下にも行けないもの。他のステーションに行けば、そこから……、」

「そうじゃなくて。ほかにも、ステーションはあるんでしょ」

「ああ、……」

 エマはかすかに眉をしかめて、左上に目線をさまよわせた。

「第1ステーションはね、いちばんメインの基地なの。そもそもガラパゴスの海上合同宇宙開発基地が、宇宙港のバックアップ機能を統括(とうかつ)してて、……」

「そこで、何するの?」

「……基幹AIにログインする」

 ちいさく、ひくい声で。

(……(いか)ってるのかな、)

 そう、思うが、さすがに口には出せない。

「ネットワークで(つな)がってはいるけど、こっちからのアクセスは受け付けない。そういう設計になってるみたい。物理的に第1ステーションまで行かないと……、」

「……AIって、会話できるだけの知能があるんでしょう。連絡は、とれないの?」

「え、」

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