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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
178/206

宇宙生活のいやなところ

挿絵(By みてみん)

「……ふう、」

 慣れない無重力トイレで用を足しおえ、朱里はほっとして廊下に出る。エマは、体育座りの姿勢で宙に浮いたまま、じっと壁をにらみつけている。

 エミーはその横で、壁にぴったりと背をつけて、すまして立っている。無重力をものともせず、マネキンみたいに。

「……あのトイレ、吸引式っていうの? なんかヤダな」

 思わず、文句が口をつく。……もっとも、野宿していた頃よりはずっとまし……いや、どうだろう。

(……このまま出られなかったら、ずっとあれで用を足すわけね)

 おもわず陰鬱な気持ちになって、ため息をつく。

「慣れるよ。……言ったでしょ。無重力にも、すぐ慣れるって」

 エマの声がした。いつのまにか、手が触れるほどそばにいて、こちらを見ていた。

「慣れたっていうか……まだ、少し気持ちわるいけど。宇宙酔いが残ってるみたい」

「薬もあるんだけどね。……どこかに」

「どっかに?」

「……ここの間取り、よくわかんなくて。医務室とか倉庫とか、……あっても、薬品は残ってないかもしれないけど」

「地図かなんかないの?」

「それも、よくわからない」

「そんなことある?」

「あるの。……システムの構造が、わたしの知ってるものと違うみたい」

 かすかに、ため息。眼は伏せずに、まっすぐに前をみながら。

昇降(しょうこう)ホールには、もう戻れない。このままじゃ、空気漏れは直せないし……」

 そう、と小さく朱里はつぶやいて、黙りこんだ。

「……キーコードがさ」

「え?」

「わたしの権限で、入れるはずなんだけど」

「なにが?」

「制御システムの設定画面。……ログインはできたけど、なんだか知らないエラーメッセージが出るの。……基幹AIを起動してくださいって」

「AI? じゃあ……」

「基幹AIなんて、……聞いたことない」

「あなたが実験に行っているあいだに、システムが変わったってこと?」

「そうとしか考えられないけど、……」


 まさか、AIにそんな大事な仕事を?

 きりりと、奥歯をかみしめるようにして、エマはつぶやいた。

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