173/206
すぐに動かなくなる、
数時間──、
たぶん、そのくらい。
人工知能に、椅子を柔らかいソファに替えさせて、横になっている。かけ布団はないが、寒くはない。
なんとなく、頭が痛い。
無重力の感覚に、近い。まだ、体はずっしりと重いが。
「ねえ、」
ちいさく、ささやきかける。
照明の落ちた狭い部屋。エマはすぐそばにいるはずだが、よく見えない。ただ、前かがみにソファにかけているシルエットが、ぼんやりと。
さっきから、ぜんぜん動かない。
「……ね、」
と、もういちどちいさく呟いて、あきらめる。
部屋のすみに、まっすぐ立っているエミーも、微動だにしない。
「……カセイジン、」
かすれた声で、もう一度。
やはり、返事はない。
*
ぎいぎいぎい、と音がする。幻聴かもしれない。
*
一時間──、
*
しばらくして、朱里がふと目線をもどすと、エマが顔をあげていた。