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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
169/206

なめらかな家具

 軌道エレベータは、海上から衛星軌道をはるかに超えて屹立する、巨大な塔だ。

 引力と遠心力で、ぴいんと上下に張られた、6本の(つる)だ。

 重心には、巨大なメインステーションがあり、先端には、バラストをかねた発着ステーションがある。

 地上からメインステーションへ、メインステーションから発着ステーションへ移動するには、昇降機を使って、長い長い道のりを辿(たど)らなければならない。



「……メインステーションまでは、とりあえず行けるから」

 昇降機は、およそ4(じょう)半くらいの小部屋だった。

 見たところは、なにもない。窓も、椅子も、コントロールパネルさえ。

 灯りは頭上ではなく、壁に。床と天井の、ちょうど真ん中の高さに、小さな照明がぐるりとまっすぐな点線を描いている。

 エマが、その中心に立って、

「……どうぞ、」

 と、言った。

「なんにも、……ない。」

 朱里は、おもわずちいさな声でつぶやいて、見回す。左右に開いていたドアはぴったり閉まって、もう影もかたちもない。エマのうしろにエミーが、つんとすまして立っている。

 背負っていた荷物を、床におろして、とりあえず座ろうかと思う。膝をまげると、「ア、」とエマがつぶやくのが聞こえる。

 エマの長い人指し指が、ついと壁のライトをなでるように動く。

「……椅子を、」

 ちいさな声で。


 かしゃんと、なにかが擦れる音がして、床が盛り上がって固まった。

 まるい、小さなスツールの形に。

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