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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
168/206

メトロノームみたいな足音

 階段を、一段ずつのぼっていく。

 かたん、かたん、とリズムよく。

 エマの足音は、メトロノームみたいにきれいに(ひび)く。そのとなりに、エミーの機械の脚の音。こちらは、少しくぐもって、低い。


 朱里の足は、べたりと重い。


 ふと手持ちぶさたに、高い天井を見上げる。円形のシーリング。くもった日のおぼろ月みたいに、ぼんやりと青白い。


 あの方向に、地球があるのだという。

 足下に宇宙。

 頭上に地球。

 そうして、いま足を重くしているのは、地球の引力ではなく、このステーションが地球のまわりを回転することによる、遠心力──、


 考えながら、目を伏せて歩く。


 食事を終えてから、30分ばかりも歩いたか。もう、ずいぶん遠くまできた気がする。

 いや。

 ずいぶん、近くまで戻ってきたのだ。


 地球まで──、


 ……いや、本当に?


 

「エマ!」

 足をとめて、叫ぶ。

 かたかた、と(すね)が震えている。ほんの少し息を止めて、気をおちつかせる。

 立ち止まってふりむいたエマに、大きな声で。

「あなたの地球と、……わたしの地球は、……違う場所、じゃないかな」


 エマは、青い目でじいっとこちらを見ていた。


「話は、……昇降機(しょうこうき)に乗ってからにしましょう」

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