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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
165/206

サイコロみたいな食事

 直方体を、あけてみる。


 まず、ふたつの直方体を、手元で比べる。そっくりだが、ラベルが違う。製造年は、どちらも同じ。

 2085年。

 朱里が覚えている西暦(せいれき)より、60年あまり先の数字。その意味は、よくわからない。いまが何年なのかも。

 ともかく、直方体のはしをこすって、小さな突起をぎゅっと動かすと、空気が()り込む音がして、ぱかんと蓋があく。

 中身は、……無地の、ちいさな立方体がいくつか。白と、茶色の。

「……なあに、これ」

「知らない。むかしの宇宙食はこういうのだったってさ」

 エマはかるくそう言って、白い直方体を口のなかに(ほう)り込む。

「昔の?」

 ちいさく問い返すが、返事はない。

 朱里もまねをして、食べてみる。しゃりしゃりと、砂をかむような感触がして、口のなかで()けていく。

 ふしぎな味。

 お菓子(かし)と、……肉をまぜたような。水分はぜんぜんなくて、ぱさぱさと口の中が乾いていく。

 もう片方の、茶色のサイコロを口に入れてみる。

 ……にがい。

「これ、……大丈夫?」

 ごくんと、むりやりに()み込んでから、朱里はエマのほうをみた。

「さあ、たぶん大丈夫じゃない」

 エマは(すず)しい顔で、次々にそれを口に放り込んでいる。

 朱里はあきらめて、目をつむってさっさと食事を済ませた。


 どうせ、食欲はないのだ。

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