サイコロみたいな食事
直方体を、あけてみる。
まず、ふたつの直方体を、手元で比べる。そっくりだが、ラベルが違う。製造年は、どちらも同じ。
2085年。
朱里が覚えている西暦より、60年あまり先の数字。その意味は、よくわからない。いまが何年なのかも。
ともかく、直方体のはしをこすって、小さな突起をぎゅっと動かすと、空気が入り込む音がして、ぱかんと蓋があく。
中身は、……無地の、ちいさな立方体がいくつか。白と、茶色の。
「……なあに、これ」
「知らない。むかしの宇宙食はこういうのだったってさ」
エマはかるくそう言って、白い直方体を口のなかに放り込む。
「昔の?」
ちいさく問い返すが、返事はない。
朱里もまねをして、食べてみる。しゃりしゃりと、砂をかむような感触がして、口のなかで溶けていく。
ふしぎな味。
お菓子と、……肉をまぜたような。水分はぜんぜんなくて、ぱさぱさと口の中が乾いていく。
もう片方の、茶色のサイコロを口に入れてみる。
……にがい。
「これ、……大丈夫?」
ごくんと、むりやりに飲み込んでから、朱里はエマのほうをみた。
「さあ、たぶん大丈夫じゃない」
エマは涼しい顔で、次々にそれを口に放り込んでいる。
朱里はあきらめて、目をつむってさっさと食事を済ませた。
どうせ、食欲はないのだ。