相対性理論。
「やっぱり! そうだと思った」
「え?」
「名前。日系の名前でしょ」
「まぁ……、」
「母国語は英語なの? バイリンガル?」
「それは……、」
朱里はまた答えに詰まってしまった。エマが口をひらく前に、……あわてて、話題をかえる。なんとなく、うしろめたい気持ちで。
「……あなたは、」
こんどは、朱里が話題をかえた。
「あなたは、どうしてここにいるの? エマ」
「知らないの?」
エマは一瞬だけきょとんとして、それから、首をふった。
「……実験、」
「どういう実験なの?」
「ほんとうに、知らないの? ニュースとかで、……」
朱里はぐっと目を見ひらいた。そんなに、有名な実験なのだろうか。
「……知らない」
「そう、それじゃ……、ええと、あなた、物理学の知識は?」
「……よく、知らない」
エマは、ちょっと斜め上に目線をさまよわせた。おおよそ十秒ほど。
それから、かすかにため息をもらして、
「……加速実験、」
と、いった。
「加速?」
「宇宙船に速度を与えるの」
「宇宙船に、……」
「つまり、……今回の実験は、2つの目的を兼ねていて。……ひとつは、新開発のエンジンの試験。もうひとつは、加速そのもの」
「加速、……そのものって?」
「物体が、光速に近い速度で運動したとき、どういう現象が起こるのか──、」
「それって、……ええと、」
一瞬だけ目をつむって、地球にいたころの知識を総動員する。
朱里は、小さくいった。
「……もしかして、相対性理論、っていうやつ?」
「え?」
エマは、きょとんとして、といかえした。
「なあに、それ」
*
カセイジンに相談したいな、と思う。
いつも、余計なことを言うばかりで、役に立ったことなどないのだが。