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腕輪、翻訳機、人工知能、ホログラム発生装置、次元転移装置
「あなた、船外服は?」
そういわれて、朱里はきょとんとして首をふった。
「船外活動服。まさか、」
「えっと、……宇宙服? もってない」
「はあ?」
エマは、はじめて大きな声をあげた。ぎゅっと眉をひそめて、
「どうやって、ここに入ってきたの?」
「どうやって、って……?」
「外は真空でしょう! 入り口を破壊したから、このエリアは与圧不能で──、」
「その……、」
朱里は、しばらく迷ってから、
「……これ、で」
手首に癒着している、白い腕輪をさして、ちいさな声で、そういった。
「へえ?」
エマは、一瞬だけ眉をひそめて、……それ以上、なにも聞き返してはこなかった。
*
「……わたしは、べつの世界からきたの。だから、……」
……ここのことは、知らないの。
朱里が、目を伏せて小さな声でそう言っても、エマは、ほとんど驚いた顔を見せなかった。
そう、
としずかに言って、ただ、黙っていた。
*
……ほんとうは、今すぐ腰をすえて考えたかったのだが、保留にしておくしかなかった。
いちど、考えはじめると、すぐには戻ってこられそうになかったから。