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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
153/206

すこし、違ってみえる文字のレタリング

 軽装。半袖(はんそで)のやわらかそうな白いシャツ。大きなロゴが、胸のところに。ロゴは、たぶんアルファベットの筆記体。N……なんとか。英語だろうか。図案化されているせいか、朱里の知っている文字とは少し違ってみえる。

 下半身は、細身の、藍色(あいいろ)のズボン。(すそ)のところはきゅっと(しぼ)られている。ポケットはない。そのかわり、腰のところに、黒い、小さなポーチがついている。プラスチックかなにか、硬そうな素材の。

 半袖で寒くないのか、と考えてから、気づく。この部屋は、ずいぶん暖かい。空調が効いているらしい。ただし、風は感じない。それらしき音も、ない。

 立ち上がって、ゆっくりとこちらを向いた。あらためて見ると、それほど背は高くない。朱里と10センチも違わないだろう。

 大きな目を、ぱっちりと開けて、こちらを見ている。さっきまで、微動(びどう)だにしなかったのに。

 (ねむ)っていたのだろうか。いや、それにしては──、


 それから、壁際の女が、ぴくん、と身をふるわせる。

 ぱちんと、まばたき。眼球が、かすかに動いて、……少しずつ、胸が上下しはじめる。呼吸を、いま、はじめたように見える。錯覚(さっかく)かもしれないが。

(やっぱり、ロボットなのかな)

 そう考えて、眉をひそめる。


 いままで出会ったことのあるロボットや人工知能を、思い出してみる。まっさきに浮かぶのは、カセイジンと、デイジー。どちらも、似ていない。それから……、

(クロヒナギクと、黒機兵(こっきへい)……)

 ぼんやりと、思いだす。もう遠い昔のことみたいに。

 この旅をはじめたばかりの(ころ)に出会った、宇宙船デイジーベルの召使(めしつか)いたち。


 ……無機質な、機械の。


 この黒髪の女が、それに似ているというわけではないが……、

「あの、」

 朱里が、かすかな声をあげると、

「……だ、れ?」

 シートに座っていた金髪の女が、かすれた声で、そう、いった。



 金髪の女は、エマ=ライトと名乗った。

 おちついた、静かな声で。

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