緊急再稼働シーケンス
メインステーションのシステムに入る。ここから全てが操作できるわけではないが、最小限の情報は見られる。
やはり、電力不足。宇宙船から供給したわずかなエネルギーで、太陽光パネルのエラーチェックを指示する。とりあえず、メインステーションの近くの1ブロック。少しでも電力源を確保しないと、燃料が尽きたら真っ暗だ。
エラーはない。発電システムは生きているらしい。
カメラを起動する。それから、太陽光パネルの展開を指示。
画面を凝視する。
メインステーションは、地上から屹立する高い高い塔のなかばだ。
大気圏よりずっと上、地球の重力が遠心力と拮抗する点より、ほんのわずか上。
赤道上に6本ある塔のメインステーションを、軽いチューブがつなぎ、遠心力でぴんと張っている。ぐるりと、円を描くように。
その、チューブの両脇に、太陽光パネルが折りたたまれている。
エマのいる発着ステーションの直下、いや、エマからみれば、はるか頭上。大西洋エレベータのメインステーションの前後、チューブの脇から、何百枚もの巨大な長方形の太陽光発電パネルが、少しずつ、ふわりふわりと翼を広げていく。
しばらく見入ってから、はっとして次のコマンドを送る。
センサを起動させる。
まずは、この奥。発着ドックの有人エリア。慣れないインターフェースに苦労しながら、インジケータを読み取る。
まずは気圧、……ほぼゼロ。
気温、……マイナス52度。
やっぱり、人はいないのだ。
少なくとも、生命維持システムは稼働していない。
メインステーションのセンサを読み取ろうとして、やめる。その前に、発着ドックの与圧機器をチェック。……自動チェックの範囲では、問題なし。おそらく、空気は漏れていない。
事故ではない。たぶん。
与圧指示をだす。エラーはなし。与圧は可能だ。
ライフラインは生きている。
それがなにを意味するのか、わからない。酸素は循環機と貯蔵大気のほかにメインステーションから送る非常用のパイプもあるはずだが、それが生きているのかも、ここからでは不明だ。メインステーションには、もっと高度な大気生成システムもあった筈だが……、
とにかく、画面上では、与圧が進んでいることになっている。
一息つく。与圧には長い時間がかかる。ひとまず、また実験船に戻ろう。
わからないことだらけだ。




