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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
146/206

共通規格

 二重ハッチの内部には、空気はない。

 外部への出入り口は壊してしまったが、奥のハッチは無傷だ。その向こうは、有人環境(かんきょう)。通常なら。

 分厚い船外服に身を包んで、慎重(しんちょう)に船からおりる。……おりる、というのは少し違和感(いわかん)がある。地球は天井側。外宇宙は、(ゆか)側だ。

 あたりを見回す。

 本来の手順は、外側のハッチを閉じた状態で宇宙船を点検し、必要に応じて、内側のハッチの向こう側、第二ドックへ移すのだが、一人(ひとり)では無理だ。ともかく、今は地上と連絡(れんらく)をとらなければならない。

 第二ハッチ近くの操作盤へ。

 船外服の太い指で苦労しながら、起動ボタンを押す。

 動かない。

 反射的に電源コードを目で確認する。つながっている。他のボタンを押しても、反応しない。そんなにややこしい起動手順ではないはずだ。

 (とも)りもつかない。

 今は、宇宙船の外ライトで照らしているが、本来なら、ドック内部は自動で明るくなるはずだ。

 まさか、ステーション自体が、停電しているのか。

 発着ステーションの電力は、そう簡単にはなくならないはずだ。ダイソン衛星からのレーザー補給が()たれても、メインステーションからの供給がある。メインステーションは太陽光発電で自給していて、停電は考えにくい。

 なんにしても、無線連絡に誰もこたえないのは、おかしい。軌道ステーションだけならともかく、地上基地も、中央管制局も、ぜんぶ沈黙(ちんもく)だなんて。

 ともかく、……電源をなんとかしないと。

 しばらく(なや)んで、宇宙船に戻る。操作室でマニュアルを見返す。ついでに、自動で呼びかけをくりかえしているシステムのログを見る。応答はない。

 マニュアルの該当(がいとう)箇所(かしょ)を3回くりかえして読んで、手順を確認する。

 外部電源。

 実験船の電源供給アタッチメント。燃料を使わずにイオンエンジンを始動するために用意されたものだが、逆に、船から外部へ電力を供給する機能もあった筈だ。発着ドックなら、規格も合う。


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