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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
143/206

ダイソン・プロジェクト

 ふたたび目をあけると、地球はずいぶんと近くにあった。

 画面の時刻表示をみる。船内時間で、5時間ほど()ったようだ。のろのろと体をのばして、もういちどディスプレイにむかう。答えは、出ていない。ステーションからの応答もない。

 最初は手動。二回目以降は自動で。地球のステーションに、何度もメッセージを送っているが、反応なし。これも(なぞ)

 カメラの映像に切り替える。肉眼でも、もう見えるはずだが。とにかく、拡大して……、

 地球を探しながら、ふと、気づく。

 ずっと大きい光源。太陽。光学処理されたカメラ画像を、注視する。拡大。さらに拡大。

 黒点。フレア。()き上がるプロミネンス。

 それだけ。

 ダイソン・プロジェクトの衛星が、ひとつも見えない。

 まさか、と思う。太陽の近くを、地球に(かげ)がささないよう電磁力で位置を調整しながら回転する、太陽光パネルの羽をもつ、妖精(ようせい)のような衛星群。この角度なら、群れの大部分が見えるはず。


 ……なにか事故でもあって、()ちてしまったのか。

 それにしたって、まさか、全部?


 画像処理の都合で、モニターに映って見えていないだけならばよいが……。ぞっとしながら、(ほか)のところに目をむける。地球。その前に、月が目に入る。昼と夜の位置関係を頭のなかで計算し、月基地が可視(かし)部分にあることを確認する。

 ない。月基地は見えない。

 地球を見る。健在だ。赤道から高くそびえる6本の軌道エレベータも、それをつないでぐるりと地球を囲む宇宙ネックレスも。少なくとも、ここから見える範囲は、無事だ。


 ただし、応答はない。通常のプロトコルに沿ったレーザー通信だけでなく、電波も、照射灯のモールス信号さえ。


 エマは、ひざをかかえてそっと目をとじた。わからない。

 何も。

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