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異世界八景  作者: 楠羽毛
未来の世界
142/206

時刻の問題

 ため息をついて、座席を()る。無重力の船内で、ふわりと()()がる。本来はシートベルトをしていないといけないのだが、いつも省略してしまう。(せま)い船内で、天井(てんじょう)にタッチ。

 考える。

 また、考える。

 式を、頭のなかでもう一度検討する。間違(まちが)ってはいない。だいたい、誤差を検出しているだけなのだから、2回もつくりなおして間違っているはずがない。となると、おおもとのマップがおかしいのか──、

 観測誤差?

 機器の異常?

 エラーチェッカーを走らせる。異常なし。重力センサの異常であれば、遠くの天体と近くの天体で、誤差の大きさがはっきり変わるはずだが、その兆候はない。太陽はじめ近くの天体で確認したところ、重力センサと光学センサはぴったり一致(いっち)している。計測結果ではなく、天体の位置が、ちがうのだ。

 とすると、古いマップが間違っているのか。

 いや、となると、


 ──やはり、時計(とけい)が?


 もう一度、計算式を組む。高速移動した際に時間がずれることは、経験的にわかっているが、厳密な算出式はまだ完成していない。……いちおう、観測結果から、自動で補正されているはずだが──、

 とにかく、時間の流れをかえて、星の動きをもう一度照合してみる。経過時間の(ちが)いを変数にして、……

 どうしても整合(せいごう)しない。時刻の問題ではないのだ。


(……いつから合わないんだろう、)


 マップの記録は、超光速エンジンが停止した瞬間(しゅんかん)からはじまっている。その時点で、すでに、合わないのだ。


 (まぶた)をとじる。また、思考の波にのまれていく。

 その、すぐそばで。

 機械のつめたい目が、じっとエマを見守っていた。



 頭の中だけで、もう一度式を立ててみる。検算、5回目。間違いは見つからない。超光速粒子の挙動に関する事前の予測を、もう一度おさらいしてみる。頭の(おく)が、ちりちりする。夢のなかで、見つからない探しものを延々くりかえしているみたい。

 だんだん、ぼうっとしてくる。

 体から力が()けていく。だんだん感覚がうすれて、頭のなかだけが無限に広がっていく。

 答えは、まだ出ない。



 式を立てるのは、(きら)いではない。

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