昼下がりの坂道
秘密基地で、待ち合わせ。
2時半に。朱里と、ふたりで。
*
足に力をこめて、坂道を登る。
草のはえた歩道。白いサンダルで、ひびわれた舗装をふみつけて。
この上の地区は、今は空き家ばかり。公園だったところも、草ぼうぼうで錆だらけの遊具があるだけで、ほとんど廃墟。
うっすら浮き立つような気持ちをおさえて、坂道を登っていく。
崩れかけたブロック塀をよけるようにして、角を曲がる。それから、考える。
さいごに、朱里とここに来たのは、いつだっただろうか?
──2年前。それとも、もっと昔?
東田第2児童遊園。さびて剥げかかった塗装をちらりと眺めて、看板のついた車止めをまたぐ。荒れ放題の草を、足先でかきわけて進んでいく。ズボンを履いてくればよかった。せめて、靴下とスニーカーだけでも。
ショウリョウバッタが、膝についているのに気づく。つまんで、エノコログサの根本にそっと戻す。
腰まである草のむこうに、錆びたブランコ。それから、ちょっと遠くにすべり台。ジャングルジム。どれも小さくて、今はもうまともに乗れないだろう。
ここで、日が暮れるまで遊んだ。たしか、四年生の冬。とっくに日は暮れて、ジャングルジムの上から星を見ていた。
朱里と、ふたりで──、
「……あかり!」
叫ぶ。返事は、ない。
自分が来る前に、草をかきわけた跡がある。いるはずだ。
いや、
いた、はずだ。
「朱里……、」
汗のにじんだ首をふる。
もう一度、見回す。
いない。
どこかに、行ってしまったのか。
私を、おいて?




