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異世界八景  作者: 楠羽毛
海の世界
132/206

月夜のみちゆき

 夜。

 月夜であった。

 ハギアは、ひとりで森を歩いている。

 朱里は、テントで寝ているはずだ。疲れているのだろう。大きないびきをかいて、大の字になっていた。

 歩く。

 この体になってから、感覚がすっかり変わった。髪先まで意識が通っているようで、どこかが木に触れるたび、ぴん、と頭のおくに刺激が走る。

 空気がかすかに動くのさえ、はっきりと肌で感じる。

 目も、よくなった。

 以前は、かすかに光を感じるだけだった目で、まわりの様子がわかる。形も、色もだ。そのくせ、まぶしくはない。

 見えるとはこういうことか、と思う。

 見えるのと、聞こえるのに、区別がなくなった。

 目で見るのも、肌や髪先で感じるのも、探査音をきくのも、みな、同じだ。頭のなかで景色がひとつにまとまって、分けられない。

 これが、感じるということか。

 歩く。

 かすかな風、衣ずれの感覚、月あかりの下で蛇が動く気配。視界のすみで虫が跳ぶのが見える。

 歩く。

 飽きない。

 足の裏の感覚、砂。苔。くずれかけた穴の端。


 歩く──、

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