蛇の肉
少し離れたところで、昼食をとった。
テントを張るスペースはないので、てきとうに地べたに座る。朱里は食べる必要はないが、ハギアにつきあう。
蛇の肉である。焚き火で、ぱちぱちと炙る。火種が見つかったのはいいが、テント地まで持ち帰るにはどうしたらいいか、思いつかない。そのへんの樹を松明にしたのでは、すぐ溶けてしまいそうだ。
ともかく、てきとうに幹を削った薪を放り込んで、種火を燃やす。火につけると、すぐに結晶化して溶けくずれてしまうが、そのあとも火勢がおとろえる気配はない。生木というより、蝋燭かなにか、脂でできた燃料のようだ。
肉を炙るのに、串かなにかが欲しかったが、すぐ燃える木ばかりでは、どうにもならない。仕方がないので、尾をつかんで火のはしに。
焼けるのが待ちきれないらしく、ハギアはすぐ肉をとって、齧りはじめてしまう。半ばまで噛んでから、あわてたようにナイフをとって、尾のほうを少しばかりとって、朱里に。それを、もう二回ばかり。
朱里は熱いのをがまんしながら、生焼けの肉に火をいれなおす。
息でさまして、かじる。
鶏肉のようだ。ちょっと焦げて、苦味が舌の裏に染みる。
「……おいしい!」
ハギアの声。三匹捕まえた蛇の肉が、もうほとんど無い。
「地下では、……なにを食べてたの?」
「魚。それから、貝。あとは海藻かな。こっちでも獲れるみたいだし、不自由ないよ」
「そう……」
朱里は鞄から、小さなケースをとりだした。かるく振って、中身があるのをたしかめる。
適応薬である。
「それ、なに?」
「……あなたの体をつくり変えた薬」
焚火をよけるようにして右腕をのばし、渡す。
「くすり……」
ハギアは、朱里がやったようにからからから、とケースを振って、それから、たどたどしい手つきでふたをあけ、中身をしげしげと見た。
「あと1回分。あなたにあげる」
「どうして?」
朱里は、しばらく焚火をながめて、目を伏せた。
熱い。
「……わたし、責任を感じてるの」




