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異世界八景  作者: 楠羽毛
海の世界
131/206

蛇の肉

 少し離れたところで、昼食をとった。

 テントを張るスペースはないので、てきとうに地べたに座る。朱里は食べる必要はないが、ハギアにつきあう。

 蛇の肉である。焚き火で、ぱちぱちと炙る。火種が見つかったのはいいが、テント地まで持ち帰るにはどうしたらいいか、思いつかない。そのへんの樹を松明にしたのでは、すぐ溶けてしまいそうだ。

 ともかく、てきとうに幹を削った薪を放り込んで、種火を燃やす。火につけると、すぐに結晶化して溶けくずれてしまうが、そのあとも火勢がおとろえる気配はない。生木というより、蝋燭かなにか、脂でできた燃料のようだ。

 肉を炙るのに、串かなにかが欲しかったが、すぐ燃える木ばかりでは、どうにもならない。仕方がないので、尾をつかんで火のはしに。

 焼けるのが待ちきれないらしく、ハギアはすぐ肉をとって、齧りはじめてしまう。半ばまで噛んでから、あわてたようにナイフをとって、尾のほうを少しばかりとって、朱里に。それを、もう二回ばかり。

 朱里は熱いのをがまんしながら、生焼けの肉に火をいれなおす。

 息でさまして、かじる。

 鶏肉のようだ。ちょっと焦げて、苦味が舌の裏に染みる。

「……おいしい!」

 ハギアの声。三匹捕まえた蛇の肉が、もうほとんど無い。

「地下では、……なにを食べてたの?」

「魚。それから、貝。あとは海藻かな。こっちでも獲れるみたいだし、不自由ないよ」

「そう……」

 朱里は鞄から、小さなケースをとりだした。かるく振って、中身があるのをたしかめる。

 適応薬である。

「それ、なに?」

「……あなたの体をつくり変えた薬」

 焚火をよけるようにして右腕をのばし、渡す。

「くすり……」

 ハギアは、朱里がやったようにからからから、とケースを振って、それから、たどたどしい手つきでふたをあけ、中身をしげしげと見た。

「あと1回分。あなたにあげる」

「どうして?」

 朱里は、しばらく焚火をながめて、目を伏せた。

 熱い。

「……わたし、責任を感じてるの」

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